発信者情報開示のデザインの誤りはどこにあるのか?

木村花さんの死亡に関して、ネットワークの匿名性についての見直しがやっと議論になってきています。

総務大臣のコメントは、NHK「ネット上のひぼうや中傷 投稿者特定の仕組み見直しへ 総務相」です。

また、「ソーシャルメディア利用環境整備機構」が、声明をだしました。声明自体は、こちらです

木村さんを追い込んだのがネットワークの匿名性によるわけで、それを見直しましょう、ということになりつつあるかと思います。

ここでいう「匿名性」は、あるかないか、という話ではなくて、「インターネットと匿名性」という論考で定義したのですが「行為者を特定しようとするコストが、社会通念上、合理的なレベルを超えた状態」という状態と定義しています(82ページ以降)。

「行為者を特定しようとする」コストというのは、発信者情報開示制度を用いて、特定するためのコスト(お金だけではなくて手間暇全体の概念です)です。これが非常にかかってしまう、弁護士としても、これを依頼されても、なかなか大変ですよ、でもって、これだけは、費用がかかってしまいますよ、しかも、プロバイダがログをちゃんと保存しているか微妙ですからね、ということになってしまいます。

ただ、遡って考えると、そもそも、ログというのは、もともとは、プロバイダの情報なので、それを開示してね、といって、開示するかどうかは、プロバイダの判断に本当に委ねられる仕組みだったはずです。それを一定のルールを作ったのが、プロバイダ責任制限法4条の発信者情報開示の仕組みなわけです。

この発信者情報開示に関する情報が、整理されているページはこちらです。

プロハイダ責任制限法の解釈に関するもっとも信頼のおける解説・総務省「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律-解説-」はこちらになります

ここで注意すべき表現があります。

発信者情報は、発信者のプライバシー及び匿名表現の自由、場合によっては通信の秘密として保護されるべき情報であるから、正当な理由もないのに発信者の意に反して情報の開示がなされることがあってはならないことは当然である。

という表現ですね(31頁)。ログの記載が、それ自体として「プライバシー」の利益で保護されることをうたっていますね、アメリカ法だとプライバシーに関する合理的な期待となって、第三者のもとに保管されている場合については、それ自体、その期待は、合理的なものとはいえないとされることが多いのですが、そのような理論とは関係なしな点が留意点です。

そして、注ⅵですが、

 ただ、プロバイダ等が任意に開示した場合、要件判断を誤ったときには、通信の秘密侵害罪を構成する場合があるほか、発信者からの責任追及を受けることにもなるので、裁判所の判断に基づく場合以外に開示を行うケースは例外的であろう。

という表現ですね。結局、開示を求められても、自発的に開示しないで、裁判所までいってくださいね、というのがデフォルトになって、斯くして、インターネットの「匿名表現の自由」というのが”守られた”という仕組みになっています。

この仕組みについて、プロバイダに早期に開示させるインセンティブの設計がありません。それか、現状を導いているということができるでしょう。

個人的には、早急に開示に対応しない場合は、同法3条1項の解釈論として自ら、「公表者」として責任をおう(公表を幇助している)ことがありうるというのが確認されるべきでしょう。

私の解釈からいうと、発信者情報についての発信者のプライバシーの保護は、その第三者のもとで開示されないという「合理的な期待」がある限りで保護されているにすぎません。しかも、これは、「他人の秘密」として電気通信事業法4条2項で保護されているにすぎません。(1項2項分離論です)

そうでなくても、「合理的な期待」があるのにないと思ったというのは、事実の錯誤になるので故意がなくなるので、(仮に1項で保護されていたとしても)犯罪はもともと成立しませんね(2項に刑事罰がないのはさて置くとしても)。

では、「匿名表現の自由」との関係は、どうなるのかという問題がでてきます。仮名を使って表現するのと、リンクできなくするというのは、全く別なわけです。仮名による表現を匿名表現の自由と読んでしまったところ(McINTYPE vs. OHIO ELECTIONS COMMISSION 115 S.Ct. 1551,1516(1995))に、罪があるわけです。こんなスライド参照

すくなくても、プライバシーは、人権のカタログのなかで最優越的な地位をしめるものではなくて、他の利益と同じ程度のものとして設計されるべきだと思います。そうだとすると、書面で濫用がなされていないか検証ができる形態であれば、開示されてもいいかと思っています。

4条2項におとしこむ解釈論がとれれば、これは、事業者の内部の義務での保護が問題となるので、むしろ、内部の行為規範を作成して、それの遵守を検証する仕組み、これは、消費者行政課が権限を持てることになります。

私が総務大臣だったら、まず、注ⅵを削除させますね。その上で、

発信者情報は、発信者の第三者のもとにおけるプライバシー保護に対する合理的な期待、場合によっては、法に定める他人の秘密として保護されるべき情報であるから、正当な理由もないのに発信者の意に反して情報の開示がなされることがあってはならないことは当然である

と書き換えさせましょう。そうだとすると、「合理的な期待」がない場合には、自発的に開示したとしても問題がなくなりますね。それを行為規範で担保するのがいいのではないか、と思っています。

そして、この解説について12頁をインセンティブの観点から見直すことを推奨するかと思います。丸7の部分ですが、これについては、通知によって、プロバイダに、権利侵害の認識を知らしめてもいいわけなので、その旨を記載しましょう。そして、もし、通知を受けても、意味なく開示しない場合には、侵害の幇助をしていると同様であるという評価をくわえることができそうです。私にいわせれば、上の注ⅵよりは、上品な解釈だと思いますね。

プロバイダが、責任を負うことになるって?その場合には、権利侵害保険を作って、対応その措置をどれだけまじめにやるかで保険料に差をつけるというのがイギリスの昔の制度だったと思います。結局、社会全体で制度設計をしていかなくてはならないのだろうと思います。

法制度の設計は、総合アートですね。内部の文書の修正だけで、この問題に対する解決のメドがたつかと思います。いかがでしょうか。

Alert:Telecommunication Business Law amendment in Japan and Foreign Legal Persons

This is English version of my blog entry.

“A bill to partially amend the Telecommunications Business Law and Nippon Telegraph and Telephone Corporation Law” has been published. Link(Japanese) is here.

This bill is aiming to ensure the enforcement of telecommunication business law against foreign telecommunication provider such as Google .

According to the press, “Cabinet Decided Extra-Territorial  Application of Secrecy of Telecommunications “( in Japanese)

I discussed in detail in my blog titled  “Read the report of the Ministry of Internal Affairs and Communications Experts’ Meeting, which try to apply the”secrecy  communication clause to foreign capital company.”

Let’s take a look at the overview.

It states, “There is a limit to the enforcement of the Telecommunications Business Law against foreign corporations, etc.”  and “Not enough protection to subscribers in Japan””Not equal competition conditions between domestic and foreign providers.”

And the figure in the overview,

 

 

 

 

 

This figure shows that “service provision in Japan” can be the connection point of domestic law of legislative jurisdiction and the Telecommunications Business Law of Japan can be  applied as long as connecting point exists in Japan.

Even a foreign corporation (definition is described below)  is obliged to register and submit as telecommunication business provider as long as it provides telecommunication business service toward service subscriber in Japan. That is the principle of the Telecommunications Business Law in Japan. This is, as mentioned in the blog above, the same as the logic of Article 63-22 of the Financial Payment Services Act.

In short,it is obvious that legislative jurisdiction extends to foreign corporations.Strictly speaking ,from international law concerns,the enforcement is another issue. That is the reason why the outline of the amendment slide slides emphasized that “to ensure the enforcement of the Telecommunications Business Law against foreign corporations, etc. ”

So if you’re a lawyer, you shouldn’t use the phrase “extraterritorial application” to “foreign corporations” contrary to the press saying.

Next,make  analysis based on articles of the bill.

First, in the context of Article 2 of the Revised Act, a foreign corporation is defined as “a foreign corporation , organization or  an individual with an address in a foreign country.”

Article 9 of the Business Law states

A person that intends to operate a telecommunications business must obtain a registration from the Minister for Internal Affairs and Communications; provided, however, that this does not apply to the following cases:

and Article 10 sets out that

(1) A person that intends to obtain a registration as set forth in the preceding Article must, pursuant to the provisions of Order of the Ministry of Internal Affairs and Communications, file a written application describing the following particulars with the Minister for Internal Affairs and Communications:

and amendment bill add article 10-2 in the following

10-2 In the case of foreign legal persons etc.(omit) , the name and adress of its representative in Japan  ;

In short, as long as service provider provides  substantial telecommunications business services to subscribers in Japan substantially,such provider owes an obligation to register as telecommunications business services.

The next issue is whether  search service and the e-mail service is regarded as “substantial telecommunications business service” or not.

I mentioned in the blog above in detail.

This amendment seem to acknowledge following issues in the followings.

1)Effect of failure of registry of foreign legal persons

2)engorcement jurisdiction issues

3) interpretation of  substantial ” telecommunications business”

and so on.

I would like to analyse these iuues further. Research funds may be necessary. Please contact via contact form.

 

外国法人に対する電気通信事業法改正案

「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」が公表されています。リンクは、こちら。

報道としては、「通信の秘密、域外適用 法案を閣議決定です。

外国法人に対しての電気通信事業法の改正について検討した私のブログは、「「通信の秘密」外資にも適用の総務省有識者会議の報告書を読む」になります。

概要を見ていきましょう。

そこでは、「外国法人等に対する電気通信事業法の執行には限界があり」とか「外国法人等に対する規律の実効性を強化するため」と記載されていますね。

あと、その下の図ですが、

 

 

 

 

これは、「日本国内へのサービス提供」という連結点がキモになって、電気通信事業法が適用されますよ、ということをいっているように読めるかと思います。

外国法人(定義としては、外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいうとされています)であっても、実質的な電気通信事業者であれば、登録・届出の義務があるよ、というのが、電気通信事業法の認識であるということになります。この点は、上のブログで触れたように、資金決済法63条の22の理屈と同じということになります。

要は、立法管轄権は、外国法人についても及んでいるんだけど、「執行ができないんだよね」ということをいいたいのが、概要のキモなのかなとか思っています。なので、法律家であれば、「外国法人」に対しても「適用」されるようになった、という表現は、しないようにしましょうね、ということです。

でもって、条文です。

まずは、改正法2条関係で、「外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいう」と外国法人等の定義がなされています。

事業法9条で「電気通信事業を営もうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。」とされていて、10条で「前条の登録を受けようとする者は、総務省令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書を総務大臣に提出しなければならない」とされています。

今回の改正は、この10条2号について

外国法人等(外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいう。以下この章及び第百十八条第四号において同じ。)にあつては、国内における代表者又は国内における代理人の氏名又は名称及び国内の住所

として、外国法人の登録義務を明確にしようというものになります。

要は、登録義務があって、それを懈怠して、わが国の利用者に対して、実質的な電気通信事業サービス(私としては、業として、電気通信役務を他人の需要に応ずる役務を提供することをいうと定義しています)を行うことは許されませんよ、ということになるかと思います。

でもって、検索サービスや電子メールサービスは、この「実質的な電気通信事業サービス」なのかという論点になるのだろうと思います。Gメールは、該当するんじゃないのということは、上のブログで触れておきました。

ところで、メディアなどで、普通にいっている「通信の秘密」は、電気通信事業法4条の(秘密の保護)

「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。

2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」

になるわけです。

今回、この部分の改正はありません。ところで、1項についていえば、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密」なので、外国法人が、上の登録をしていない場合には、この「通信の秘密」の規定の適用の方策がないですね。

というのは、「電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項の規定による届出をした者をいう。」(同法2条5号)となるので、登録を受けてなければ適用がなしえないからです。

では、2項は、どうなの、ということになって、これは、1項と2項の関係について、どう考えるのか、ということによるかと思います。高橋説は、1項と2項をわけて考えています。

そのような立場だと我が国の電気通信事業法が日本市場の利用者に密接な関連を有する外国法人に対しても適用しうるということになるので、2項は、登録していない外国法人に対して、他人の秘密を守るべき義務の根拠法制としうるということになりそうです。ここら辺はよくわからないところですね。

基本的には、消費者行政課が、インターネット時代の電気通信事業法の逐条解説をだして、立法管轄権について、どう考えるのか、事業法4条1項2項の解釈をどうするのかとか、明らかになると、もうすこし分かりやすくなるのでしょうね。(混乱が増えるだけかもしれませんが)

 

 

 

 

 

「通信の秘密」外資にも適用の総務省有識者会議の報告書を読む

「通信の秘密」規制、外資にも適用」という記事がでています

その総務省有識者会議の報告書というのは、多分これをいっているものと考えられます

競争ルールとかいっておきながら、市場画定はしているのかいな?とかいう突っ込みはさておきます。

あと、いま一つ、電気通信事業にきわめて厳しいプライバシー規制が課せられているのは、昔、公企業と思っていたのの残滓なんじゃないの、と、2009年のとある研究会でいったのに、みんなポカンとしてましたというのもさておきます(要は、競争がない場面だとプライバシー規制がきわめてきびしいし、逆に競争がある市場だと、規制していなくても、利用者に任せていいんじゃないという思想は、理解されない傾向が引き続いているということ)

「通信の秘密」というプライバシーも、競争状況としてフェアにしましょう、とされています。これは、サービスの利用条件として、プライバシー保護が一つの要素になっているということの裏付けですね。その一方で、日本の「通信の秘密」は、(消費者行政課の解釈とメディア上では)どうしようもないくらい厳しいですし、肥大化しているものなので、これを、強行規定として、フェアにするために適用を拡大すべし、というのが、方向性としていいのか、という根本的なことは考えるべきなのだろうと思います。

役所的には、何かやっていますといいたいのですが、それは、ポーズというべきなのでしょう。イノベーションを促進するとか、エビデンスはあるのですか、ということになります。でも、そもそも、「プライバシー」の定義をしないで、イメージで議論しているので、エビデンスはとれないですよね、なんてのも、お酒を飲むとしゃべったりします。

さて報告書について、ちょっとみていきます。

この記事の部分は、
「電気通信設備を国外のみに設置する者であって、日本国内に拠点を置かない者に対しては、同規定による規律が及んでいない。そのため、上記の状況の変化に対応する観点から、国外に拠点を置き、国内に電気通信設備を有さずにサービスを提供する国外のプラットフォーム事業者に対する同規律の適用の在り方が論点として挙げられる。」
とされているところ以降かと思います(報告書 154頁)。

でもって、「憲法において通信の秘密を保護する意義がプライバシーの保護にとどまらず、国民の表現の自由や知る権利を保障すること、国民が安心・安全に通信を利用できるよう通信制度を保障することにより、国民の通信の自由を確保することにある点に鑑みると、提供主体が国内か国外かを問わず国民の通信の秘密を保護することこそが上記憲法上の要請に適うものと考えられる。」となっています。
そして、
「我が国の利用者を対象にサービスを提供する場合には、提供主体が国内か国外かにかかわらず等しく利用者情報及び通信の秘密・プライバシーの保護に係る規律を適用することにより、我が国の利用者の利用者情報の適切な取扱いが確保されるようにすることが適当である。
また、国内外の事業者間の公平性を確保し、イコールフッティングを図る観点からも、国内か国外かに関わらず、利用者情報及び通信の秘密等に係る規律が等しく適用されることが適切であると考えられる。」
とされています。
結論(?)部分は、「国外のプラットフォーム事業者が、我が国の利用者を対象として電気通信サービスと同様の、又は類似したサービスを提供する場合についても、電気通信事業法に定める通信の秘密の保護規定が適用されるよう、法整備を視野に入れた検討を行うとともに、あわせてガイドラインの適用の在り方についても整理することが適当である。」
となっています。

そもそも、みんなが普通に議論する通信の秘密は、制定法上としては、「電気通信事業者」の取り扱い中にかかる通信に関するものです(4条)。そして、法文上は、電気通信事業者は、「電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項の規定による届出をした者をいう。」ので(同2条5号)、文言解釈からいうと、外国の事業者の通信の取扱中にかかるデータについての取り扱いを、電気通信事業者の取扱にかかる「通信の秘密」の問題として取り扱うのは、筋違いということになります。(まして、本当の高橋説だと4条1項は、意思伝達の内容に関する規定なので、事実に関する取扱は、含まれないことになります)。

ただし、わが国の主権の現れとして、我が国の国民の通信に関するデータの取扱を他の国の事業者に「立法」として要請することは可能なはずです。この意味でのわが国での通信に関する保護が、結果として、外国の事業者に適用されることは、何ら、現在の法体系として問題ではないわけです。

この点については、仮想通貨の勧誘に関して、外国に根拠があっても、わが国の国民に影響を及ぼす場合に届出を求める仕組みは仮想通貨対応で準備されています-外国に所在する交換業者は、登録を受けていない場合には、勧誘が禁止されている(資金決済法63条の22)。この理屈を応用すれば言いわけです。

(古くは、この話は石黒一憲「証券取引法の国際的適用に関する諸問題」証券研究102巻(1992年)で論じられていました)

でもって、電気通信事業法4条を外国事業者に適用するといえばいいのかという問題があります。(そもそも、電気通信事業者が形式的で、届け出をしてもらわないといけないというのは、さておくことにします。)

実質的な電気通信事業者というのはどのようなものか、という解釈論があります。これは、大学が、事業者の届け出をしなくてはならないのか、ということの議論の時に、結構、議論になりました。

これについては、「電気通信事業参入マニュアル」が参考になります。

電気通信役務というのは、「電気通信設備を⽤いて他⼈の通信を媒介し、その他電気通信設備を他⼈の通信の⽤に供することをいう。 」(2条3号)わけですが、そうだとすると、実質的な電気通信事業者というのを考えることができるわけです。「業として、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する者をいう」ということになります。

米国で、このような実質的な電気通信事業者の取扱中にかかる通信についても「通信の秘密」を守らないといけませんよ、というような改正は可能になります。

いま一つは、電気通信事業者が外国に所在するかの問題ではなくて、「取扱中」といえるか、という問題もあるような気がします。いわゆる宅内における処理については、電気通信事業法の規定が及ぶものではないのは、このブログでも何度も触れておきました。

Gメールのサービスというのは、宅内の処理なのか(単に他人の通信の用に供しているだけ)、それとも、通信事業者の取扱のなかでの処理なのか。

上のマニュアルでは、「他⼈の通信を媒介する」という説明があって、「他⼈の依頼を受けて、情報をその内容を変更することなく、伝送・交換し、隔地者間の通信を取次、⼜は仲介してそれを完成させること」をいうとしています。ここでは、「電⼦メールやクローズド・チャットといったサービスのように、サービスの提供者がサーバ等の電気通信設備を⽤いて、利⽤者Aが利⽤者Bに伝えたい情報を、その内容を変更することなく利⽤者Bに伝達する場合、当該サービスの提供者は他⼈の通信を媒介していると判断される。」となるので、このような業者自体が、電気通信事業者であると解されることが示唆されているといえるかと思います。

すると、現在の状況の整理としては、グーグル等は、わが国の電気通信事業法でいくと、「実質的な電気通信事業者」ではあるが、電気通信事業法が、上述のような届出を基準とした形式的な定義であるために、電気通信事業法の適用を及ぼせない状態ということになるかと思います。

そうだとすると、届出が必要であるとして、それに応じなければ、制定法の根拠をつくって、なんらかの措置が正当化されることになるわけかと思います。

その場合、行動ターゲッテイグ広告をどう整理するか、とうことになってきますね。通信の秘密についての個別具体的同意という話になりますが、むしろ、国内において電気通信事業者に対してのいままでの厳格な「個別具体的同意」の枠組みの指導が、現実離れしてました、ごめんなさい、ということなのかと思います。

個人的には、広告も出している身(ホームページは、グーグルの標準的な広告スキームに準拠しています)としては、知りたい広告を廉価に需要者に届け出ることができるようになっているのも技術の進歩と考えています。なので、ある程度のナッジはいるとしても、「個別具体的同意」の枠組みは、もうそろそろやめたらいいような気がします。クッキー規制って、私には時代遅れに見えているんですけど。

では、どのような枠組みか、ということになります。プライバシの認知が、「文脈」によって変わって認知されるということがキーになるような気がします。この話は、また、別の機会に考えたいですね。

電波法の「窃用」と警察の犯罪捜査

通信の秘密関係でよくいわれる窃用ですが、国会審議で見つけたので、メモしておきます。

平成16年04月13日衆 – 総務委員会 – 13号で、審議録は、こちら。

「窃用とは、正当な理由なく発信者または受信者の意思に反して利用することということでございまして、警察が犯罪捜査のために暗号通信を復元するということは、今申しましたような漏らすとかあるいは窃用する目的があるというふうには言えないと考えておりまして、本罪の対象とはなりません。」と表現されています(有冨政府参考人 149番発言)。

ところで、暗号通信のなかには、犯人の通信も、正常な通信も含まれているわけですが、「漏示、窃用の目的がないことになりますから、この場合は罰則の対象とはならないものと承知いたしております。もちろん、捜査機関であるからといいましても、無限定に暗号通信を復元できるわけではありませんし、あくまで捜査の必要性が認められる場合に限って復元を行うことが許されるのでありまして、そのような必要性がない場合にまで暗号通信を復元することができないのは当然であります。 したがいまして、捜査機関が暗号通信の復元を行う場合には、捜査の必要性を十分に踏まえる必要があるものと考えております。」というコメントがなされています(実川副大臣 155番発言)。

このような場合に、令状がいるのではないか、という山花委員と議論は、平行線をたどるのですが、すくなくても、「法執行のため」というのは、解釈でいう「自己または他人の利益のため」という用語には、含まれないということがはっきりした、ということかと思います。

「窃用」が用いられている審議録は、48件しかないので、他にもおもしろいのがあったら、クリップしたいです。

「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」6回議事録

通信の秘密を検索して、自分に関する記事をみていたら、「インターネット上の海賊版対策に関す る検討会議」第6回の議事録が検索に上がってきました。

いわゆるブロッキング問題が議論された一連の会議で、最終的には、ブロッキング問題については、

知的財産戦略本部の全体の資料は、こちらです。

議事録としては、その19頁目で林委員から、「資料として「通信の秘密の数奇な運命(国際的な側面)」という高橋郁夫先生の 論文を提出させていただきました。この点について補足説明したいと思います。」という言葉がありました。

「通信の秘密の数奇な運命(国際的な側面)」というのは、「通信の秘密の数奇な運命」の3本目の論文になります。「憲法」「制定法」について、「国際的な側面」になります。
掲載されているのは、情報ネットワーク・ローレビュー 第15巻 情報ネットワーク法学会 編です。

この論文は、2016年の段階の論考で、構成としては、

1 問題の所在と分析の枠組み
2 通信主権の概念
2.1 用語としての通信主権
2.2 国家主権の概念と通信との関係
3 国外からの通信に関する問題
3.1  国外からの通信に対する国内の通信資産等の防衛の問題
3.2 ギャップの解消のアプローチ
3.3 具体的な解釈論への展開
4 国外への通信の問題点
4.1 国外への通信の分析の枠組みについて
4.2 対外的なサイバー作戦の諸問題
4.3 民間の行為の諸問題
5 結論
となっています。

ご紹介いただいた部分の記述ですが、
「現時点においては、「プロバイダ責任制限法 著作権関係ガイドライン」が明らかにされており 、特定電気通信による情報の流通によって自己の著作権等を侵害されたとする者は、関係するプロバイダ等に当該著作権等を保有することを明らかにして、それを侵害する情報の送信を防止すべきことを求めるという仕組みが準備されている。しかしながら、この関係するプロバイダ等が国外にある等の場合において、どのようにこのような権利者の立場を確保するかという点については、いまだ、仕組みが存在していない状態である。この場合に、著作権者等が、プロバイダ等に対して、その海外からの通信を我が国において、遮断すべきという裁判を求めるということが想定されうる。この場合には、海外における通信の秘密、プロバイダ等における通信の裁量などが比較考量されるものと考えられる。この比較考量の場合に、海外からの通信であることがひとつの要素として考慮され、我が国の法のもとにおいては、秘密として保護が保証されるものではないと考えられる。」
となっています。

そして、宍戸常寿先生から
「2点目は、林先生から提出いただきました高橋郁夫先生の御論文というのは大変有名な論文でございまして、通信の秘密について立ち入った議論をしている方というと高橋先生という感じで、私もよく勉強させていただいているのですが、ここで議論の前提になっているのは、やはり通信主権をどう確保するか。その観点から、国内通信と国際通信を分け
るか、分けないか、非常に大きな論点がここに潜んでいた上での高橋先生の御見解であり、利益衡量だと思っております。 」
とご評価いただきました。(議事録22頁)

通信の秘密の他の論文に比較すると国際的な側面というのは、マニア向けのもののような感じで書いていたのですが、「大変有名な論文」という評価をいただきまして、本当にありがたいことだなあと思っています。

ちなみに、「通信の秘密の数奇な運命」なんですが、ルーカスばりに、いろいろなエピソードでサーガにできるなあと考えています。
エピソード1 憲法制定前の日本における通信の秘密
同2 憲法編
同3 制定法(上)
同4 制定法(下)
同5 電波法編
同6 国際的な側面
同7 比較法編(イギリス編)
同8  同(アメリカ編)
同9 わが国における制定法とその解釈について
あたりでしょうか。現時点では、1、2、3、6については、発表済みですが、平成以降の発展をまとめる、エピソード4については、構想だけというのが悲しいところです。それこそ、総務省のしかるべきところが、調査するべきかと思うのですが、それも期待できないと思っていますので、なんとかしたいです。

実は、電波法編は、このシリーズに組み込めるのではないか、と今、考えていたりします。

ちなみに、著作権と通信の秘密との関係については、私の会社のほうで「諸外国におけるインターネット上の権利侵害情報対策に関する調査研究の請負」報告書としてまとめています。

私としては、著作権と通信の秘密との関係については、この総務省の報告書や沖縄ICTフォーラムでの発表(これについては、ここで)とかで、考えを整理したところがあります。

昨年の議論としては、「ブロッキング」という用語で、サーベイランス・モニタリングをいうものと定義して、その定義に伴う広さを攻撃したというところがあると考えています。むしろ、プロバイダの拡散停止の権利という整理をすれば、これは、なんら「通信の秘密」との関係が生じるものではないと考えています。