デジタル法務の実務Q&A 11月上旬発売です

 

 

 

 

 

 

「デジタル証拠の法律実務Q&A」に次ぐ、デジタル法シリーズ第2弾である「デジタル法務の実務Q&A」が、11月上旬に発売になります。

情報ガバナンスをベースに不正調査・個人情報保護、GDPR、仮想通貨、AI、APIなど現代社会で問題になる論点できる限りカバーしています。

あと、刑法の部分がすごく充実しています。デジタル証拠本は、官公庁にも支持されたと聞いています。官公庁さん、この本もよろしくお願いします。

デジタル証拠の本が、これだけ支持されたというのは、社会のデジタル化が、ついに法曹界も無視できないレベルにいたったということなのだろうと思います。しかしながら、社会は、その間に数歩も進んでいます。その社会にキャッチアップするというのが、この本のミッションです。チャットボットの設計図まで公開して、なんちゃってAIの法律問題を検討していたりしています。

ご購入いただけると幸いです。

「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」

「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」は、前の「電気通信事業分野における競争ルール等の 包括的検証の検討体制について」でふれましたけど、新設の研究会になります。

資料によると

「ネットワークを巡る環境が大きく変化してきていることを踏まえ、ネットワーク利用及びコスト負担の公平性や透明性確保の在り方等を検討するため、「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」を開催する」ということだそうです。

検討事項は、
(1)電気通信事業者、コンテンツプロバイダ、オンライン・プラットフォーマー、利用者など、関係者間におけるネットワーク利用及びコスト負担の公平性の在り方
(2)新たなビジネスモデルに適用されるルールの明確化
(3)利用者に対する情報提供(透明性確保)の在り方
(4)その他
です。

でもって、「「ネットワーク中立性に関する研究会」の開催及び提案募集の実施」がでていて、主な論点が整理されています。

(1)現状及び課題の把握
ネットワークの混雑状況や、トラヒックの増加に対応するための関係者の取組/ 米国(連邦レベル、州レベル)やEU(加盟国レベルのものを含む)等におけるネットワーク中立性に関する政策動向

(2)ネットワーク利用及びコスト負担の公平性の在り方

  • a)ネットワーク関係者間のコスト負担、特定関係者間における契約におけるネットワークのコスト負担の在り方(固定ブロードバンドサービス(定額制)、モバイルブロードバンドサービス(従量制、上限付き定額制の料金モデル))
  • b)特定のトラヒックを優先することは認められるべきか。
  • c) 適切なネットワーク管理を目的として、認められる範囲をどのように考えるべきか。(ヘビーユーザーに対する帯域制御、特定コンテンツの不可逆圧縮等)

(3)具体的なビジネス動向への対処

  • a) ゼロ・レーティングやスポンサードデータ等のビジネスモデル
  • b)ネットワーク中立性の確保のための施策
    -> 確保するための手段
    公開、サービス品質のモニタリング、紛争解決手段の活用等)
    -> 電気通信事業者が公開すべき情報
    消費者、影響を受けうる他のインターネット利用者、コンテンツ事業者、他ISP、MVNO等

です。

私としては、実は、ネットワーク中立性は、結構、詳細にエントリにまとめています。「ネットワーク中立性講義」というタイトルで

(1)背景

(2)エンド・ツー・エンド原則と議論の契機

(3)米国の議論(2008年まで)

(4)同(2014年まで)

(5)同(ゼロレーティングの包摂)

(6)同(トランプ政権前)

(7)同(トランプ政権の動き)

(8)日本における通信法との関係

(9)競争から考える(1)

(10)競争から考える(2)

(11)競争から考える(3)

(12)競争から考える(4)

(13)競争から考える(5)

(14)ゼロレーティングと利害状況(1)

(15)ゼロレーティングと利害状況(2)

という形で、整理しています。

特に、上の(8)であげたように、ネットワーク中立性という用語は、①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題)②利用者の利用行動の了知の問題題③利用と対価の公平性の問題 ④サービスの質と超過価格⑤契約における透明性の問題/コンテンツによる区別的取扱⑥ 接続サービスと公平な競争 ⑦その他の問題 という問題を束ねる傘の役割をしているということになります。

わが国では、電気通信事業法の解釈として、相当部分の問題が解決済みということがいいように思っています。(ネットワーク中立性が「新たな問題」というような表現はしないほうがいいでしょうね)

上の問題提起は、個別の問題ごとにわけてみていくといいような気がします。

  • ネットワーク関係者間のコスト負担->③利用と対価の公平性の問題⑥ 接続サービスと公平な競争
  • 特定関係者間における契約におけるネットワークのコスト負担の在り方(固定ブロードバンドサービス(定額制)、モバイルブロードバンドサービス(従量制、上限付き定額制の料金モデル))->④サービスの質と超過価格
  • b)特定のトラヒックを優先することは認められるべきか。>④サービスの質と超過価格
  • c) 適切なネットワーク管理を目的として、認められる範囲をどのように考えるべきか。(ヘビーユーザーに対する帯域制御、特定コンテンツの不可逆圧縮等)->①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題

というような感じでしょうか。

ある意味で、問題を法的に分類した段階で、ほとんど解決するような感じでしょうか。基本的には、市場が問題を解決するので、市場の対応に委ねられない問題としてどのような問題が起きているのか、ということでしょう。しかも、法としては、競争に対する対応の部分においても、制定法においても、また、ない部分については、解釈についてのガイダンスが公にされてるところです。

「(3)具体的なビジネス動向への対処」についても同様ですね。

この論点は、2年前に調査が公募でかかっていて(平成28年度 「欧米等諸外国におけるネットワーク中立性に係る政策動向に関する調査研究の請負」)、ITリサーチアートは、落札できなかったのが残念ですね。

 

 

EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用

「EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用」という報道がなされています

正式なプレスリリースは、こちらのページです。

このブログ(駒澤綜合法律事務所)においても、「アップル信者の存在の科学的証明?-Googleアンドロイド事件」というタイトルのもと、事実認定について、まとめています。

Googleの関係する事件としては、比較ショッピングサイトに関する事件(グーグル・ショッピング事件と呼ばれているようです。エントリとしてはこちら(「欧州委が示す巨大ネット企業の責任」)、プレスリリースはこちら)と、このアンドロイド事件(40099)、AdSenseの事例(これはまだ分析していません)があります。

今回のアンドロイド事件のプレスリリースですが、まずは、「スマート携帯OS」の競争について考察しています。

アップルとスマート携帯電話についての市場は、競争になっているようだけども、現実のところ、「グーグルのデバイス製造会社(上流)に対する行動の制約としては、十分になっていない」と認定しています。

要は、アップルは、信者がいるので、市場としては別であると認定しているんじゃないの、ということです。(これは、昨年のブログでふれたところ)。

グーグルは、アンドロイドというOSの市場において、ドミナントであると認定されています。確かに、中華スマホじゃないと、グーグル・プレイストアがないスマホにはあえないのは事実ですね(90パーセント以上と認定されています)。

それでもって、EUの競争法違反の事実としては、以下の事実が認定されています。

(1)グーグルの検索とブラウザアプリの違法な抱き合わせ(Illegal tying of Google’s search and browser apps)
これは、プレイストアのプリインストールが製造業者にとって必須とされていることを意味します。

委員会の認定としては「検索アプリの抱き合わせ」「クロームブラウザの抱き合わせ」をしており、「製造業者に対して、競争する検索・ブラウザアプリをプリインストールするインセンティブを減少させた」としています。これに対する、これらのプリインストールが必要だったというグーグルの主張は採用されませんでした。そこでは、「グーグルは、数ビリオンドルをプレイストアから、稼ぎだしており、アンドロイド機器から、検索広告ビジネスに必要なデータを集めている。制限なしに、検索広告から重要な利益を稼ぎだしうるのである」から根拠がないとしています。

去年の事実認定は、一般ユーザとの間での「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」といっていました。製造業者の自由なアンドロイドの製造の自由をみとめないことが、消費者の便益を妨げるというようにと重点が変わっているようです。

(2) グーグル検索の排他的プレインストールに対する違法な支払い(Illegal payments conditional on exclusive pre-installation of Google Search)

これは、グーグルが、グーグル検索を排他的にインストールすることに対してインセンティブを支払っていることが、違法であるとしています。
競争的検索エンジンを採用することに対してインセンティブを減少させ、競争を傷つけるというものです。

インテル決定でもふれたように、委員会は、諸般の事情を考慮して、インセンティブが認められる条件、額、マーケットシェア、期間から判断したとしています。そして、違反行為は、2011年から、2014年までの間であり、2014年には、終了したと判断されています

(3)競争するアンドロイドの発展・配布に対する違法の妨害(Illegal obstruction of development and distribution of competing Android operating systems)

これは、製造業者に対して、グーグルの認めないアンドロイドバージョン(アンドロイド・フォーク-Android forks)を利用することを妨害したというものです。プレイストアと検索エンジンをプレインストールするためには、アンドロイドフォークを製造しないことを約束させられたのが、これに該当します。委員会は、アマゾンが、Fire OSを発売し、発展させるのを妨げていると認識しています。

「断片化」防止のためには、必要だったという主張に対しては、技術要件を満たすことでもって、アンドロイドフォークを妨害しなくても、望む目的は果たせたはずであるとか、アンドロイドフォークが、技術的失敗によるとかの証拠はないとしています。

モバイルOS市場と、検索・ブラウザが別市場で、OSの市場力でもって、検索・ブラウザ市場を制覇したというのでしょうか。IE4.0にケンカうって、欧州では、消費者にとって、何かいいことがあったのでしょうか。
日本の感覚だと、iOSとアンドロイドは、競争状態にあり、検索・ブラウザの体験も踏まえて、どちらにするかを選んでいるように思えます。欧州でのモバイル市場は、消費者の認知からすると別なのかと思いますが、IT業界に対する競争法の適用が、その介入のためのコストがかかることも含めて、効果は、微妙だなあと感じるところですね。
(いまさら、野良アンドロイドの製品は、買いたくないというのが消費者の感覚でしょうし)

規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限

「NVIDIAが規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限」という記事がでています。

ここで、「これはNVIDIAの独占的地位を利用した、明らかな地位の濫用と言えます。」という記載があります。これを、思考実験として、わが国の独占禁止法的にどのように考えるのか、ということを考えてみましょう。
ここで、「独占的地位の濫用」といっているので、多分「優越的地位の濫用」といわれている規定を意図しているのでしょうから、具体的に、独占禁止法をみてみましょう。
同2条9項6号ホは、「前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」となっていて、この趣旨は、具体的には、課徴金対象として、別個の条文で規制されることになった
「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。」
という規定(同法2条9項5号)

一般指定13項(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
「13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。」
にその趣旨が表れています。(あとは、特殊指定として、新聞業特殊指定、物流特殊指定、大規模小売業特殊指定ですね。)

でもって、この「優越的地位の濫用」については、いろいろな解釈論が、でています。個人的には、世界的な解釈とできる限り合わせるようにして、市場におけるドミナントポジションの濫用のうち、典型的な行為を定めたと解しています。それはさておき、ライセンス契約の条項の変更について、解釈論としては、上の条項のどれに当てはまるのか、という問題になりますね。条項としては、「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し」に該当するというのでしょうかね。
そうはいっても、「相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」というのは、どういう意味なのか、ということになります。

構成取引委員会のガイドラインをみてみましょう。「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 」があります。

ここでのポイントは、「取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りる」という解されていること、そして、それは、「乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合」となり、それは、「乙の甲に対する取引依存度,甲の市場における地位,乙にとっての取引先変更の可能性,その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する」ということになりますね(同ガイド4頁)。

そうなのと、やっぱりここでも、市場というのが、ポイントになるかとおもいます。「廉価なAI計算に特化したGPU」市場とかがあれば、その市場において、Nvidiaは、優越した地位をもっているのかもしれませんが、実際の判断としては、それは、困難であるようにおもわれます。市場の考え方については、このブログ(市場とその画定)でふれています。(市場の画定は、非常に困難な作業なのですが、現時点では、せいぜいGPU市場というのが通常かとおもいます)

そうだとすると、通常の考え方をすれば、当該市場において、Nvidiaは、優越した地位を有しているわけではないので、特に、その濫用といわれるようなことはしていない、ということになるかとおもいます。

ガイドラインに書いてありますが、「事業者がどのような条件で取引するかについては,基本的に,取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものである。取引当事者間における自由な交渉の結果,いずれか一方の当事者の取引条件が相手方に比べて又は従前に比べて不利となることは,あらゆる取引において当然に起こり得る。」ということになります(2頁)。優越的地位の濫用は、その市場における市場力を濫用して、競争を減殺するのを防止するための制度であって、具体的な契約条件の変更が、資金のない「かわいそうな」弱小当事者を助けるための制度というわけではないということかとおもいます。