プラットフォーマーと個人情報プラス

個人情報保護委員会から、「「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する当委員会の考え方について」という報道発表がでています。

もともとの「公正取引委員会からの考え方(案)」については、一つ前のエントリで、メモをしておきました。要点は、「優越的な地位の濫用」を「優越的地位」という微妙な判断基準のもとに「競争」概念とは、違う観点から、市場の競争状況を具体的に考えないで、「プラットフォーム規制」という流れのもとに適用するというのは、注意すべきであるということです。

それは、さておき、そこでは、「個人情報プラス」に対する規制が意味されているのではないか、ということを示唆していたのですが、まさに、この考え方において、この「プラス」部分に対する規制であることが、確認されています。

この「プラス」規制であることがよく分かるのは「消費者に対して優越的地位を有するデジタル・プラットフォーマーにあっては、個人情報保護法に違反する場合だけでなく、個人情報保護法に違反するとはいえない場合であっても、消費者に対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる場合がありうる。」という部分です。

前のエントリで、これをどのように位置づけるのか、ということを指摘しておきました。いわゆるプライバシ・アドブォケイト諸氏におかれては、個人の「何を」を保護法益としているのか、具体的に、この「不利益」とされるのは何か、さらに、個人のプライバシの買いたたきにたいして、このようなパターナリズムを正当化するのは、何なのかというのを明らかにしてもらいたいなあ、と思っています。

まあ、反語的な表現にしましたが、要は、今回の公正取引委員会も個人情報保護委員会も、「プラットフォーム規制」という流れの中で、「優越的地位の濫用」の理論を濫用しているなあ、というのが私のエントリのまとめということになりそうです。

プラットフォーマー論とプライバシーの落とし穴

「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」が、出ています。

内容としては、いわゆる「デジタル・プラットフォーマー」の特性、独占禁止法の適用、優越的地位の濫用の適用可能性について「はじめに」でふれた後に、

1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方
2 「取引の相手方」の考え方
3 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方
4 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方
5  優越的地位の濫用となる行為類型

の各点について、分析がなされています。

プラットフォーマー論が競争法の文脈で語られる場合、特に、優越的地位の濫用の理論を用いた場合には、市場の画定をしなくていいとされるので、競争との関係が、いわば、グダグダになってきます。市場についての分析が厳密になされない、したがって、競争との関係について考慮が及ばないということが一つの落とし穴になっているのではないか、と考えられます。

いわゆるGAFAをみたときに、さて、どのような市場なのでしょうか。
グーグルは、検索+広告市場ですね。アマゾンは、商品購入+広告でしょうか。FBは、SNS+広告。アップルは、アップル(製品)というハードウエアかもしれません。
図解しておきます。

 

ところで、利用者からだと、検索、商品購入、SNSしか見えていなかったりします。つい、この見えやすい市場での競争力を押さえつけるべきだという考え方になりがちではないか、というのが、「落とし穴」といった理由です。

2 「取引の相手方」の考え方について

考え方は、「サービスを利用する際にその対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は」と記載されています。

まず、大原則「No Free Lunch」です。サービスが提供される場で、これらの情報が、利用者から、サービス提供者に供給される、したがって、取引の相手方ということになるのは、いうまでもないことでしょう。「対価として」ということにどのような意味があるのか、ということです。配達のためだけに提供されて、それ以外にまったく使わなければ、「対価として」とはいえないとなるのかもしれません。

市場の画定の際には、価格を上げた場合の利用者の移行をみるわけですが、サービスの費用がゼロの場合であっても取引の相手方になりうるは、当然といえるかと思います。価格については、インセンティブが与えられる場合もあるわけなのは、私たちのeID 研究で、すでに10年前に明らかにされているところです。

米国で「アマゾンの競争政策におけるパラドックス(Amazon’s Antitrust Paradox)」という論文が独禁法の適用に影響を与えたという記事があるのですが、そのうち、参照してみることにしたいと思います。

次に、ここで、「等」とされているところの意味を考えます。そして、私の特許でも明らかなように、商品選考の判断さえも、貴重な情報になってくるのです。その意味で、個人情報規制プラスが示唆された用語法になります。

3 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方
考え方の(1)および(2)は、普通に市場力があるということなので、それは、それでいいかと思われます。(公取委的には、説明法は違いますけどね)

4 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方
これは、解説としては、「公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいう」といっていますが、ほとんど同義反復ですね。

で、実は、「是認されるか」という問題は、そもそも、「優越的地位の濫用」って「競争」との概念では、どのように整理されるのという問題にさかのぼってきます。
この点については、競争法の世界で、非常に議論のあるところです。

個人的には、「優越的地位の濫用」は、世界的な解釈からみたときに、競争との関係では、説明がつかないものではあるが、日本的な状況から、実務的なものとして運用されていると整理しています。詳しくは、「規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限」を参照ください。

日本において、当事者間の法律関係について、執行が困難であったり、コストがかさんでしまったりする場合に、対応する必要があり、それが競争法に裏口から、忍び込んでいるというところでしょうか。

この点についてのまとめた論文として、参照しやすいものとして加賀見 一彰「「優越的地位の濫用規制」の濫用の規制 : 法・法学と経済学との相互対話を目指して」があります。

以下、このアプローチをもとに検討します。

すると、検索市場の取引関係を見ていくと、以下の図のようになります。

ところで、個人情報等について、これが、提供者に無料で提供されるわけです。

これを検索市場の競争秩序からみたときにどうなるのでしょうか。

競争というのは、需要にたいして種々の供給が提供されて、その種々の提供の間で、選択がなされうる場合ということになるかと思います。

競争法の秩序という観点からみたときには、利用者が、個人情報等の価値について「理解しうる」のであれば、種々の検索サービスで、連携されている商品の価格が安くなるとか、情報を利用しないとか、そのような情報に対する「対価」の差別化を得ることができれば、競争が維持される、ということになるかと思います。

では、「個人情報等」が買いたたかれている、というのは、競争法の秩序からみたときに、公的に是正すべきものとして、介入すべき問題なのでしょうか。規制の効果とそのコストという問題もかんがえないといけないです。

商品の買いたたきの防止、という観点からいくと、労働力の買いたたきの禁止としての最低賃金の定めというアプローチがあることに気がつきます。個人情報等にたいして、そのような「強制的なお節介(ハードなパターナリズム)」をとるべきなのでしょうか。

公的に是正すべき場合には、何らかの手法が、効果が生じうるものであることが必要になる(改善可能性ですね)と思われます。ところが、プライバシーという観点からいくと、個人は、プライバシーが重要だといっていても、実際の選択については、ほとんど気にしない(プライバシーパラドックス)という特徴があります。なので、公的に是正することをいってみても、個人に関連する情報が何か、価値として異なるのかということが、サービスの競争の条件としては意識されることはない、ということになります。

検索市場を例にとってみてみましたが、提供者は、個人情報に関して、利用者の注意を喚起する、そして、法の定める要件を満たすということ以外に、なにか、別途、利用者にたいして、追加の対価を与えるべきなのか、ということは、それを与えるという方向性を示したとしても、利用者に対して、評価されずに、競争という観点からは、効果がない、という宿命が待ち構えているということになります。そもそも、提供者が、いろいろと利用可能な情報を、できるかぎり安価に取得しようというのは、自由主義というか、競争の観点から当然のことです。それに対抗して、何か、特別の義務をプラットフォームに課すべきであるというような議論は、実効性がありうるのか、という問題に直面するわけです。

その上に、そもそも、特別の義務論的なものは、プライバシーとの関係で、どのような意味があるのか、ということが問題になります。市場力を有するサービス提供者によって、取得されるとき、利用者は、プライバシーが(競争市場と比較して)特段に侵害されたと感じるのか、というように問題を言いなおすこともできます。

これは、「プライバシー」をデータ保護、個人に関するデータに関する自己決定権といっているうちは、解決できない落とし穴です。
プライバシーを、「個人の自己に関するデータが他人に了知されることから生じる不安感」と定義し、それが、文脈によって、変動するという実際を認めたときに初めて考えうる問題になってくるか、と思います。

すると、市場力を有しないプロバイダーだとなしうる行為であっても、市場力を有するプロバイダーは、なし得ない行為があるのではないか、ということになります。これは、今後、検討されるべき問題でしょう。

ところで、市場の構造を見てみると、検索市場や、商品販売市場における存在(市場力)を利用して、広告市場において有力な地位を得ようとするのはどうでしょうか。これは、広告市場での競争を減殺させる構造が生じているというよう思われます。ただし、これに対して、何らかの対応をすべきかどうか、というのは、広告市場の市場分析等がなされなければならないかもしれません。広告といっても、弁護士を探す面では、むしろ、弁護士ドットコムのほうが、強いかもしれませんね。どの程度まで細分化された市場を考えるかとかの問題もあります。

このように見てきた場合に、公的規制によって、プラットフォームをめぐる取引関係について、介入すべきではないのではないか、と考えられます。もし、本当に望ましい公的な介入は、むしろ、新規技術を促進し、また、リスクを緩和し、さらに、許容範囲を明確にすることによって、社会の発展をうながすために使われるべきでしょう。

1990年代に、マイクロソフト分割論が、騒がれ、米国政府は、多大なコストを使って、規制をなそうとしました。また、EUは、Windows95のブラウザを後にインストールするような版を作らせました。それがどれだけ競争に効果があったのでしょうか。Chromeは、EUの政策があったからといって、シェアを拡大したわけではないでしょう。技術の進展が、競争を生み出し、社会の進歩を生み出すわけです。

デジタル法務の実務Q&A 11月上旬発売です

 

 

 

 

 

 

「デジタル証拠の法律実務Q&A」に次ぐ、デジタル法シリーズ第2弾である「デジタル法務の実務Q&A」が、11月上旬に発売になります。

情報ガバナンスをベースに不正調査・個人情報保護、GDPR、仮想通貨、AI、APIなど現代社会で問題になる論点できる限りカバーしています。

あと、刑法の部分がすごく充実しています。デジタル証拠本は、官公庁にも支持されたと聞いています。官公庁さん、この本もよろしくお願いします。

デジタル証拠の本が、これだけ支持されたというのは、社会のデジタル化が、ついに法曹界も無視できないレベルにいたったということなのだろうと思います。しかしながら、社会は、その間に数歩も進んでいます。その社会にキャッチアップするというのが、この本のミッションです。チャットボットの設計図まで公開して、なんちゃってAIの法律問題を検討していたりしています。

ご購入いただけると幸いです。

「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」

「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」は、前の「電気通信事業分野における競争ルール等の 包括的検証の検討体制について」でふれましたけど、新設の研究会になります。

資料によると

「ネットワークを巡る環境が大きく変化してきていることを踏まえ、ネットワーク利用及びコスト負担の公平性や透明性確保の在り方等を検討するため、「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」を開催する」ということだそうです。

検討事項は、
(1)電気通信事業者、コンテンツプロバイダ、オンライン・プラットフォーマー、利用者など、関係者間におけるネットワーク利用及びコスト負担の公平性の在り方
(2)新たなビジネスモデルに適用されるルールの明確化
(3)利用者に対する情報提供(透明性確保)の在り方
(4)その他
です。

でもって、「「ネットワーク中立性に関する研究会」の開催及び提案募集の実施」がでていて、主な論点が整理されています。

(1)現状及び課題の把握
ネットワークの混雑状況や、トラヒックの増加に対応するための関係者の取組/ 米国(連邦レベル、州レベル)やEU(加盟国レベルのものを含む)等におけるネットワーク中立性に関する政策動向

(2)ネットワーク利用及びコスト負担の公平性の在り方

  • a)ネットワーク関係者間のコスト負担、特定関係者間における契約におけるネットワークのコスト負担の在り方(固定ブロードバンドサービス(定額制)、モバイルブロードバンドサービス(従量制、上限付き定額制の料金モデル))
  • b)特定のトラヒックを優先することは認められるべきか。
  • c) 適切なネットワーク管理を目的として、認められる範囲をどのように考えるべきか。(ヘビーユーザーに対する帯域制御、特定コンテンツの不可逆圧縮等)

(3)具体的なビジネス動向への対処

  • a) ゼロ・レーティングやスポンサードデータ等のビジネスモデル
  • b)ネットワーク中立性の確保のための施策
    -> 確保するための手段
    公開、サービス品質のモニタリング、紛争解決手段の活用等)
    -> 電気通信事業者が公開すべき情報
    消費者、影響を受けうる他のインターネット利用者、コンテンツ事業者、他ISP、MVNO等

です。

私としては、実は、ネットワーク中立性は、結構、詳細にエントリにまとめています。「ネットワーク中立性講義」というタイトルで

(1)背景

(2)エンド・ツー・エンド原則と議論の契機

(3)米国の議論(2008年まで)

(4)同(2014年まで)

(5)同(ゼロレーティングの包摂)

(6)同(トランプ政権前)

(7)同(トランプ政権の動き)

(8)日本における通信法との関係

(9)競争から考える(1)

(10)競争から考える(2)

(11)競争から考える(3)

(12)競争から考える(4)

(13)競争から考える(5)

(14)ゼロレーティングと利害状況(1)

(15)ゼロレーティングと利害状況(2)

という形で、整理しています。

特に、上の(8)であげたように、ネットワーク中立性という用語は、①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題)②利用者の利用行動の了知の問題題③利用と対価の公平性の問題 ④サービスの質と超過価格⑤契約における透明性の問題/コンテンツによる区別的取扱⑥ 接続サービスと公平な競争 ⑦その他の問題 という問題を束ねる傘の役割をしているということになります。

わが国では、電気通信事業法の解釈として、相当部分の問題が解決済みということがいいように思っています。(ネットワーク中立性が「新たな問題」というような表現はしないほうがいいでしょうね)

上の問題提起は、個別の問題ごとにわけてみていくといいような気がします。

  • ネットワーク関係者間のコスト負担->③利用と対価の公平性の問題⑥ 接続サービスと公平な競争
  • 特定関係者間における契約におけるネットワークのコスト負担の在り方(固定ブロードバンドサービス(定額制)、モバイルブロードバンドサービス(従量制、上限付き定額制の料金モデル))->④サービスの質と超過価格
  • b)特定のトラヒックを優先することは認められるべきか。>④サービスの質と超過価格
  • c) 適切なネットワーク管理を目的として、認められる範囲をどのように考えるべきか。(ヘビーユーザーに対する帯域制御、特定コンテンツの不可逆圧縮等)->①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題

というような感じでしょうか。

ある意味で、問題を法的に分類した段階で、ほとんど解決するような感じでしょうか。基本的には、市場が問題を解決するので、市場の対応に委ねられない問題としてどのような問題が起きているのか、ということでしょう。しかも、法としては、競争に対する対応の部分においても、制定法においても、また、ない部分については、解釈についてのガイダンスが公にされてるところです。

「(3)具体的なビジネス動向への対処」についても同様ですね。

この論点は、2年前に調査が公募でかかっていて(平成28年度 「欧米等諸外国におけるネットワーク中立性に係る政策動向に関する調査研究の請負」)、ITリサーチアートは、落札できなかったのが残念ですね。

 

 

EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用

「EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用」という報道がなされています

正式なプレスリリースは、こちらのページです。

このブログ(駒澤綜合法律事務所)においても、「アップル信者の存在の科学的証明?-Googleアンドロイド事件」というタイトルのもと、事実認定について、まとめています。

Googleの関係する事件としては、比較ショッピングサイトに関する事件(グーグル・ショッピング事件と呼ばれているようです。エントリとしてはこちら(「欧州委が示す巨大ネット企業の責任」)、プレスリリースはこちら)と、このアンドロイド事件(40099)、AdSenseの事例(これはまだ分析していません)があります。

今回のアンドロイド事件のプレスリリースですが、まずは、「スマート携帯OS」の競争について考察しています。

アップルとスマート携帯電話についての市場は、競争になっているようだけども、現実のところ、「グーグルのデバイス製造会社(上流)に対する行動の制約としては、十分になっていない」と認定しています。

要は、アップルは、信者がいるので、市場としては別であると認定しているんじゃないの、ということです。(これは、昨年のブログでふれたところ)。

グーグルは、アンドロイドというOSの市場において、ドミナントであると認定されています。確かに、中華スマホじゃないと、グーグル・プレイストアがないスマホにはあえないのは事実ですね(90パーセント以上と認定されています)。

それでもって、EUの競争法違反の事実としては、以下の事実が認定されています。

(1)グーグルの検索とブラウザアプリの違法な抱き合わせ(Illegal tying of Google’s search and browser apps)
これは、プレイストアのプリインストールが製造業者にとって必須とされていることを意味します。

委員会の認定としては「検索アプリの抱き合わせ」「クロームブラウザの抱き合わせ」をしており、「製造業者に対して、競争する検索・ブラウザアプリをプリインストールするインセンティブを減少させた」としています。これに対する、これらのプリインストールが必要だったというグーグルの主張は採用されませんでした。そこでは、「グーグルは、数ビリオンドルをプレイストアから、稼ぎだしており、アンドロイド機器から、検索広告ビジネスに必要なデータを集めている。制限なしに、検索広告から重要な利益を稼ぎだしうるのである」から根拠がないとしています。

去年の事実認定は、一般ユーザとの間での「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」といっていました。製造業者の自由なアンドロイドの製造の自由をみとめないことが、消費者の便益を妨げるというようにと重点が変わっているようです。

(2) グーグル検索の排他的プレインストールに対する違法な支払い(Illegal payments conditional on exclusive pre-installation of Google Search)

これは、グーグルが、グーグル検索を排他的にインストールすることに対してインセンティブを支払っていることが、違法であるとしています。
競争的検索エンジンを採用することに対してインセンティブを減少させ、競争を傷つけるというものです。

インテル決定でもふれたように、委員会は、諸般の事情を考慮して、インセンティブが認められる条件、額、マーケットシェア、期間から判断したとしています。そして、違反行為は、2011年から、2014年までの間であり、2014年には、終了したと判断されています

(3)競争するアンドロイドの発展・配布に対する違法の妨害(Illegal obstruction of development and distribution of competing Android operating systems)

これは、製造業者に対して、グーグルの認めないアンドロイドバージョン(アンドロイド・フォーク-Android forks)を利用することを妨害したというものです。プレイストアと検索エンジンをプレインストールするためには、アンドロイドフォークを製造しないことを約束させられたのが、これに該当します。委員会は、アマゾンが、Fire OSを発売し、発展させるのを妨げていると認識しています。

「断片化」防止のためには、必要だったという主張に対しては、技術要件を満たすことでもって、アンドロイドフォークを妨害しなくても、望む目的は果たせたはずであるとか、アンドロイドフォークが、技術的失敗によるとかの証拠はないとしています。

モバイルOS市場と、検索・ブラウザが別市場で、OSの市場力でもって、検索・ブラウザ市場を制覇したというのでしょうか。IE4.0にケンカうって、欧州では、消費者にとって、何かいいことがあったのでしょうか。
日本の感覚だと、iOSとアンドロイドは、競争状態にあり、検索・ブラウザの体験も踏まえて、どちらにするかを選んでいるように思えます。欧州でのモバイル市場は、消費者の認知からすると別なのかと思いますが、IT業界に対する競争法の適用が、その介入のためのコストがかかることも含めて、効果は、微妙だなあと感じるところですね。
(いまさら、野良アンドロイドの製品は、買いたくないというのが消費者の感覚でしょうし)

規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限

「NVIDIAが規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限」という記事がでています。

ここで、「これはNVIDIAの独占的地位を利用した、明らかな地位の濫用と言えます。」という記載があります。これを、思考実験として、わが国の独占禁止法的にどのように考えるのか、ということを考えてみましょう。
ここで、「独占的地位の濫用」といっているので、多分「優越的地位の濫用」といわれている規定を意図しているのでしょうから、具体的に、独占禁止法をみてみましょう。
同2条9項6号ホは、「前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」となっていて、この趣旨は、具体的には、課徴金対象として、別個の条文で規制されることになった
「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。」
という規定(同法2条9項5号)

一般指定13項(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
「13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。」
にその趣旨が表れています。(あとは、特殊指定として、新聞業特殊指定、物流特殊指定、大規模小売業特殊指定ですね。)

でもって、この「優越的地位の濫用」については、いろいろな解釈論が、でています。個人的には、世界的な解釈とできる限り合わせるようにして、市場におけるドミナントポジションの濫用のうち、典型的な行為を定めたと解しています。それはさておき、ライセンス契約の条項の変更について、解釈論としては、上の条項のどれに当てはまるのか、という問題になりますね。条項としては、「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し」に該当するというのでしょうかね。
そうはいっても、「相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」というのは、どういう意味なのか、ということになります。

構成取引委員会のガイドラインをみてみましょう。「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 」があります。

ここでのポイントは、「取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りる」という解されていること、そして、それは、「乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合」となり、それは、「乙の甲に対する取引依存度,甲の市場における地位,乙にとっての取引先変更の可能性,その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する」ということになりますね(同ガイド4頁)。

そうなのと、やっぱりここでも、市場というのが、ポイントになるかとおもいます。「廉価なAI計算に特化したGPU」市場とかがあれば、その市場において、Nvidiaは、優越した地位をもっているのかもしれませんが、実際の判断としては、それは、困難であるようにおもわれます。市場の考え方については、このブログ(市場とその画定)でふれています。(市場の画定は、非常に困難な作業なのですが、現時点では、せいぜいGPU市場というのが通常かとおもいます)

そうだとすると、通常の考え方をすれば、当該市場において、Nvidiaは、優越した地位を有しているわけではないので、特に、その濫用といわれるようなことはしていない、ということになるかとおもいます。

ガイドラインに書いてありますが、「事業者がどのような条件で取引するかについては,基本的に,取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものである。取引当事者間における自由な交渉の結果,いずれか一方の当事者の取引条件が相手方に比べて又は従前に比べて不利となることは,あらゆる取引において当然に起こり得る。」ということになります(2頁)。優越的地位の濫用は、その市場における市場力を濫用して、競争を減殺するのを防止するための制度であって、具体的な契約条件の変更が、資金のない「かわいそうな」弱小当事者を助けるための制度というわけではないということかとおもいます。