岡田仁志著「決定版 ビットコイン&ブロックチェーン」

岡田先生より「決定版 ビットコイン&ブロックチェーン」を献本いただきました。

2015年4月に岡田先生、山崎先生と仮想通貨を出版したのですが、その後の3年間の進展はすさまじく、仮想通貨関係では、いわゆるFinTech法の通貨があり、マネーロンダリング関係では、アルファベイのオペレーションがあって、さらにビットコインのハードフォーク、コインチェック事件などときわめててんこ盛りな状態です。

このような混沌とするビットコイン・ブロックチェーンに関する状況の客観的かつ平易な解説としてのまさに決定版として出版されたのが本書という位置づけになるかと思います。

特に仮想通貨の分裂(3章)、ブロックチェーンエコノミーの時代(4章)などは、この数年の進展を整理しているものということができるかと思います。

その一方で、仮想通貨の法的な規制をめぐる議論、ゲーム内アイテム交換価値の議論、ICOブーム、アルファベイ事件など、サイバーペイメントまわりの議論としては、ふれていないものもあります。それらについては、今度は、私の順番になるのかもしれません。

仮想通貨をめぐる本については、昨年来の投機ブームをあおるかのような本が売れているように思えますが、表面的なブームから一歩踏み込んで、きちんと学びたい人にとっては、購入すべき学問的な裏付けのある本としておすすめできると思います。

 

EUにおける著作権執行に関する議論

EUにおける著作権の保護の流れについてみていくことにしましょう。

(1)まずは、2000年代中盤までの動きについては、情報処理推進機構に対する報告である「情報セキュリティに関連するソフトウェアの取扱いに係る法律上の位置付けに関する調査」報告書で触れられています(特に報告書24頁以下)。

特に知的財産権行使指令(Directive 2004/48/EC on the enforcement of intellectual property rights) の内容及び運用は、極めて重要なものであるといえます。

著作権指令第8条(3)は、「構成国は、権利者が、著作権若しくは関連する権利を侵害するために第三者によって利用されている媒介者に対しても差止命令を申し立てる立場にあるようにしなければならない」と定めています。

また、知的財産権行使指令においては、証拠保全手続、侵害配布ネットワークや侵害品の出所に関する情報開示の定め、そのための差止命令の定め、審理後の救済手段などが論じられている。同指令11条(差止命令)は、「構成国は、知的財産権に対する侵害があるという司法的判断がなされた際において、司法権が、侵害者に対して継続的な侵害を差し止める差止命令をなすことができるようにしなければならない。(略)構成国は、権利者が、第三者によって利用されている媒介者に対しても著作権(2001/29/EC)指令第8条(3)に反しない限り、差止命令を申し立てる立場にあるようにしなければならない」としています。

ドイツのGEMA事件やイギリスの一連のNewsBin事件などは、これらの規定を前提に理解しないといけないような気がします。

(2)具体的な執行に関する論点

著作権の執行についていえば、具体的には、著作権者が、権利侵害をなしている者のIPアドレスを取得して訴訟を提起するという場合もあるし、また、インターネット媒介者に対してブロッキングを求めるという形態の訴訟を提起する場合もあります。

前者の場場合、権利者が、IPアドレスから本人を識別する個人データ(例えば、身元や住所など)を権利者に対して開示することができるのかという論点が存在する。

この点についてのEUの判決は、Case C-275/06、 Productores de Música de España (Promusicae) v Telefónica de España SAU [2008] ECR I-00271 になります。

申立人は、音楽及びオーディオ・ビジュアルの制作者・発表者からなるNPOです。ISPである相手方に対して、KaZaA を利用して違法に著作物をシェアしていたことが分かっているIPアドレスから身元・物理的住所を明らかにするように命じた事案であって、マドリッド商事裁判所は、これを認め、明らかにするように命令を出しました。これに対して、相手方が、刑事事件捜査のため、又は公共の安全・国家防衛のためでなければならないのではないかとして控訴した事件である。
本件では、著作権指令、電子通信指令、著作権執行指令などとデータ保護指令との関係が問題となったので、EU裁判所の判断が求められました。

裁判所は、
電子通信指令は、トラフィックデータに関しての秘密を確保するための義務を求めるが、それを制限することは一定の例外のもとに認められることをも規定しているとし、それが民事手続のために許容されるかが問題であるとしました。同指令15条(1)は、データ保護指令の13条(1)の規定を例外として挙げるものとしており、同条項は、権利及び自由の保護のための例外を許容するものである。したがって、民事手続のための開示の可能性を除外するものではないと判断しています(パラ53)。

(3)差止に関するリーディングケース

また、後者のインターネット媒介者に対する差止命令の問題について、参考とされるべき欧州裁判所の判決例としては、Google v LVMH事件(2010) 、L’Oreal v eBay事件(2011) 及びScarlet Extended SA v Société belge des auteurs、compositeurs et éditeurs SCRL (SABAM)事件(2011)があります。

(ア)Google v LVMH事件(2010)

Google v LVMH事件(2010)は、LVMH(ルイ・ヴィトン等の商標権者)がGoogleの検索結果に対して、スポンサードリンクで、イミテーションのルイ・ヴィトンの商品がイミテーションやコピーとの文言とともに掲示されることに対して、登録商標を侵害しているという宣言判決を求め、地裁・控訴審において、侵害が認められており、それに対して、法的な見地から控訴した事件である。ここでは、インターネット参照サービスプロバイダが宣伝をディスプレイすることは、禁止される登録商標の使用行為に該当しないという判断がなされています。

(イ)L’Oreal v eBay事件(2011)

 これは、種々の登録商標を有している申立人が、相手方(eBay)に対して、登録商標を侵害している物品の販売に対しての懸念を示す手紙を送付したが、その対応に満足せずに、共同体商標である‘Amor Amor’と英国の登録商標である‘Lancôme’を示す17商品の販売に責任があるという判断を求めた事件です。この17商品が偽造品であることは当事者間に争いはありませんでした。

この事件において英国の高等法院は、侵害は認めたものの、多くの論点が欧州裁判所の判断にかかっているとしたものである。

この事件に関しては、種々の論点が議論されているが、10番目の質問は、欧州裁判所による「著作権行使指令(2004/48)の11条は、構成国に対して、知的財産権の保有者に対して、オンラインマーケットの運営者のようなウェブサイトの運営者に対して、侵害された権利によって、運営者が、将来の侵害を防止する手段をとるように要求する差止命令を要求することができるか、もし、それであれば、その手段は何であるのか」というものです。

前者に関しては、同裁判所は、マーケットプレイスを通じてなされる侵害に対して、侵害を終了させるというもののみではなく、さらなる侵害を防止するものでなくてはならない(パラ131)と判断しています。そして、後者に関しては、効率的で、抑止的(dissuasive)でなければならないとしています(パラ136)。
具体的には、プロバイダに対してアクティブモニタリングを義務付けるものではならこと(同139)、適法な取引に対する障壁となるものではないこと(特定の商標を有する商品の販売禁止になったりしないようにすること)(同140)、権利侵害にオンラインサービスを利用したとものに対しての効果的な救済策を確かにするために、販売者を識別することを容易にすること(同142)を命じることができるとしたのです。
もっとも、その具体的な方策は、各構成国の裁判所に委ねられたのです。

(ウ)Scarlet Extended SA v Société belge des auteurs、 compositeurs et éditeurs SCRL (SABAM)事件(2011)

Scarletは、顧客にインターネットへのアクセスを提供するISPであって、ダウンローディングやファイルシェアリングなどのサービスは、提供していなません。一方、SABAM は、音楽著作物の著作者、作曲家、編集者を代表し、第三者に対する許諾をなす管理会社です。

2004年11月26日、ベルギーの審判所は、著作権の侵害があったとし、専門家に対して、実際に、SABAMの提案する技術的解決策 が、技術的に違法なファイル共有のみを遮断(filter out)するのか、ピア・ツー・ピア型の使用をモニターする他の手法があるかどうか、手法のコストはいくらかを調査させました。この調査結果によれば、完全な規則に基づいて違法な電子ファイルのシェアリングをフィルターし、ブロックすることはできないものとされました。
2007年6月29日の判決において、審判所は、Scarletに対して、利用者が、SABAMのレパートリーに属する音楽作品を含むファイル全てを受信若しくは送信することを不可能にするようにし、終了させることを命じました。
これに対して、Scarletは、①システムのフィルタリングとブロッキングの効率性と成果は、証明されておらず、実装するための設備も実際上の困難に遭遇することから、技術的差止命令に応じることは困難であること、②システムに対して、一般的な通信のモニタリングを命じることになり、2000/31指令15条を実装する2003年3月11日法11条に違反することになる、③フィルタリングシステムの実装は、EU法の個人データ保護及び通信の秘密の法に違反する(というのは、そのようなフィルタンリグは、IPアドレスの処理を行うことになり、それは、個人データであるからである)として、控訴を申し立てました。
控訴裁判所は、手続を中止し、予備的判断のために、事件をEU裁判所に回付しました。

EU裁判所は、この問題について、判決において、上記L’Oreal v eBay事件(2011)における判断に依拠し、差止命令は、ISPに対して一般的にモニタリングを義務付けるものであってはならないことを述べました(パラ38)。

そして、その観点から、ベルギーの判決は、全ての利用者に対して、著作権の侵害に対して将来においても、防止するように積極的なモニタリングを義務付けるものであって、著作権行使指令第3条に違反する。差止命令として許容しうるものとしては、①ピア・ツー・ピアに関するトラフィックのみを識別するものであること、②著作権者が侵害されたと主張するファイルを識別すること、③それらのファイルのうち、違法にシェアされたものを決定しうるもの、④違法と思慮されたファイルシェアリングをブロックすることの全ての要件を満たさなければならない。したがって、これを満たしていないベルギーの裁判所の命令は、著作権指令15条(1)に違反する。また、この判断にあたっては、他の基本権とのバランスも考慮されなくてはならないし、ISPなどの運営者の事業を営む自由とのバランスも考慮されなくてはならない。著作権指令との関係のみではなく、ISPの利用者である個人の個人データ保護、情報を受領する自由とのバランスを侵害するものであると判断したのです。

その結果、EU裁判所は、上述の差止手法を採用することは排除されるべきであるとしたのです。

英国におけるISP等に対する著作権侵害通信遮断義務づけ判決について

株式会社ITリサーチ・アートの調査でいうと、英国において、NewsBin事件が、判決によるブロッキングとしての理論的な意味を有しているので、ここで、紹介できるかとおもいます。

英国の裁判所は、一連のNewzbin事件において、アクセスの停止を命じる判断をなしています。

具体的には、次の3つの判断があります。
①Twentieth Century Fox Film Corporation and others v Newzbin Ltd [2010] EWHC 608 (Ch))
②Twentieth Century Fox Film Corp & Ors v British Telecommunications Plc [2011] EWHC 1981 (Ch) (28 July 2011)
③Twentieth Century Fox Film Corp & Ors v British Telecommunications Plc [2011] EWHC 2714 (Ch) (26 October 2011)

(1)MewsBin(その1)
判決①は、映画会社とNewzbinを保有し、運営する会社との間の訴訟です。

NewzbinはMr Chris Elsworth (“Caesium”)、 Mr Thomas Hurst( “Freaky”)、 Mr Lee Skillen ( “Kalante”)によって運営されていました。

Newzbinは、Usenet(ユーズネット)のコンテンツのインデックスサイトです。それ自体としては、ファイルの提供も、アップロードもしていません。
Newzbin は、ユーズネットのメッセージを検索し、ヘッダー情報を「素“RAW”」 「凝縮“Condensed” 」「ニューズビン “Newzbin” 」の3つのインデックスに処理します。また、Newzbinは、XML言語をベースにした情報ファイルであるNZBファイルにより、あちこちに散らばっているユーズネットへの投稿の断片の自動収集を可能にしました。

Newzbinはアニメ、 アプリ、書籍、コンソール、エミュレーション、ゲーム、その他、映画、音楽、パーソナル機器用(PDA)、リソース、テレビなどのカテゴリーにインデックスを分けています。また、これらのカテゴリーは、サブカテゴリーの分類がなされています。コンテンツにどのようなものがあるかというバイナリの レポートは 、エディターにより作成されており、エディターは、有給です。2010年の段階で、250人ほどいたとされています。

エディターに対して違法な著作権侵害ファイルやチャイルドポルノなどを幇助することはできないとコメントされていたのですが、裁判所は、これは飾り物(cosmetic)にすぎず、実際は、遵守されていなかったと認定しています。裁判所は、同サイトのレポートの内容については、ほとんどが、著作権侵害へのインデックスであると判断しています。
Newzbin社は、裁判において、著作権侵害の事実は知らなかったといったのですが、尋問の結果やメールなどの証拠からこのような主張は採用されませんでした。

裁判所は、
1988年著作権・意匠・特許法16条は、映画の著作権は、第三者に対して著作権によって侵害されている行為を許諾(authorise)するものによって侵害されると定めているとしました。そして、上記Newzbinの行為が、上記「許諾」概念に該当するかどうかという点について、考察の結果、該当性を認めて、Newzbinの行為が著作権を侵害することを認めました。そして、同法9第7条Aに基づいて、差し止めをなすことを認めました。

同法97条A(サービスプロバイダに対する差止命令)は、

⑴ 高等裁判所(スコットランドにおいては民事控訴院)は、サービスプロバイダが、実際に著作権侵害を利用しているのを現実に悪意である(actual knowledge)場合に、差止命令を下す権限を有する

⑵ サービスプロバイダが、本条の目的に関し、現実に 悪意であるかどうかは、裁判所は、関連する全ての事実を考慮すべきであり、特に、

(a)2002年電子商取引指令規則6条(1)(c)に定める連絡手法によりなされた通知を受領しているかどうか

(b)通知を送付したものの氏名及び住所を含んでいたか、どうか

と定めています。

申立人らは、全ての著作権侵害に対する広範な差止命令を求めたが、裁判所は、権利者にもとづくもののみが認められると解されること、Newzbin社が、全ての著作権侵害について現実に悪意であることは考えられないことなどから、具体的に特定されている著作権に限っての差止命令を命じました。

(2)判決②及び③は、映画会社とブリティッシュ・テレコム(BT)との間の訴訟です。

判決②の事件の申立人らは、有名な6つの制作/映画会社(20世紀フォックス、ユニバーサル、ワーナー、パラマウント、ディズニー、コロンビア)であり、映画やテレビの制作と配給をおこなっているスタジオである。一方、相手方は、BTであり、申し立ての趣旨は、1998年著作権法97条Aに基づいて、差止命令を求めた事件です。

具体的には、BTの利用者に対して、Newzbin2サイトに対してアクセスすることを妨げる(impede)差止命令を求めたものです。

上記①事件において、Newzbin1サイトは、運営を停止したが、同じURLで、新たなNewzbin2サイトが、運営を開始し、その運営者が不明であったため(オフショアと思われる)に、申立人らとしては、BTに対して差止めを求めるのが可能な方策ということになったのです。
(3)NewsBin(その2)

判決は、著作権侵害の問題についての認定(パラ19-22)し、これに対して、解決策についての議論を行っています(23-)。

判決は、Newzbin1事件の経緯を述べ(25-44)、Newzbin社は、任意清算をすることになり、運営を停止した。しかし、同様のNewzbin2が運営を開始することになる(45-47)。ウェブサイトにおいて、このNewzbin2は、2という数字の後に、NEWZBINという文字が現れるものであって、実質的には、Newzbin1と同様である(48)。Newzbin1と同様に、英国の利用者を基盤としており(49)、商業的に利用可能な著作物が94パーセント以上を占めるとされ(50)、また、映画及びテレビがその中心である(51-55)。そのサイトは、匿名で運営されている(56-)。BTは、英国最大のインターネット加入者であり、インターネットアクセスサービスを提供している(59-)が、Newzbin2のウェブサイトをホストしているわけではない(63)としています

このあとの具体的な判断としては、
判決は、Internet Watch Foundation (IWF)のブロッキングシステムを論じ(65、66)、ISPの採用する技術一般(DNS name blocking、IP address blocking using routers、DPI-based URL blocking using ACLs on network management systems)を説明した後(71)、 B Tの採用するCleanfeed技術を論じています(73-)。
その後、判決では、法的な問題として、1998年人権法(The Human Rights Act)/欧州人権条約の規定(76-78)、電子商取引指令(79-82)、2002年同規則(83)、情報社会指令(84-85)、2003年著作権規則(86)、著作権行使指令(87-90)、同規則(91)などが紹介されています。
判決は、その後、種々の論点を検討することになる。

EU指令の解釈・他の判決例、管轄権に関する論点、具体的には、BTが侵害に利用されていないこと、実際に知らないこと、電子商取引指令第12条(1)違背、同指令第15条(1)違背、欧州人権条約第10条違背などについての議論をなしています。
また、BTは、仮に命令がなされたとしても、申立人らは、全てのNewzbin2ウェブサイトに対して利害を有しているわけではないこと、多数の要求が爆発してしまうこと、効能の観点から妥当ではないこと、比例原則に反することを理由として、現実的ではないというが、それぞれ、採用することはできないとして、映画会社の主張する命令を認めました。

その命令の主文は、
1. 相手方は、現在、www.newzbin.comやそのドメイン又はサブドメインでアクセス可能なNewzbin 若しくはNewzbin2に向けて、以下の技術を採用しなければならない。
(ⅰ)上述のウェブサイトが運営する、若しくは、利用可能なそれぞれ全ての IP アドレスであって、申立人若しくはその代理人から、書面で通知されるものに関するIPアドレスブロッキング
(ⅱ)最低でも、上述のウェブサイト及びドメイン/サブドメインにおいて利用可能なそれぞれのURLであって、申立人若しくはその代理人から、書面で通知されるものに関するDPI 基盤ブロッキング
2. 疑いを回避するために、もし、相手方が、クリーンフィードとして知られる技術を採用する場合には、詳細な分析を利用するDPIブロッキングを採用する必要はなく上記1(ⅰ)and(ⅱ)に適合するものである
3. (略)
というものでした。

(4)NewsBin(その3)
判決③の事件は、上記判決②の事実関係を前提に、状況が変更したこと、また、Desmond McMahon氏というBTの利用者が裁判に参加した上で判決②事件の差止命令の表現(The wording of the injunction)についての判断がなされています。

上記差止命令の表現については、IPアドレスブロッキング・再ルーティング、英国小売・大衆市場サービス、他のIPアドレスの論点があるとしている(5-)。
IPアドレスブロッキング・再ルーティングというのは、クリーンフィード技術の表現の訂正であり(6)、英国小売・大衆市場サービスというのは、同技術が、小売・大衆市場サービス向けのサービスになっており、申立人らは、大企業・官庁向けにもそのようなサービスの提供をもとめていたが、判事は、その拡張を妥当とは考えないということが述べられている(8)。②判決以降、BTのブロッキングの制限を回避するクライアントソフトウェアが利用可能になった。申立人としては、特定された以外のIPアドレスを拡張することを望んだが、それを限定するのに、申立人の提案する「Newzbin2のウェブサイトにアクセスすることを提供することを唯一の若しくは、主たる目的とするIP アドレス」という表現が望ましいと判断している(10-12)。

また、判決は、他のISPに対する請求との関係(13-15)、一時的遮断(16-18)、(コスト算定に関する)ノーウィチ・ファーマカルとの類似性(19-31)、命令実行の費用(32-)、BTの損害担保(34-)、申立のコスト(53-)についての議論をしている。
判断としては、具体的な命令が、上記判決②の命令が、表現が訂正されて、言い渡されている。

(5)判例理論としてのブロッキング
また、英国においては、同様の判決として、以下のものがあり、確固たる判例理論を形成しています。

・Dramatico Entertainment Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2012] EWHC 268 (Ch)、 [2012] 3 CMLR 14 (“Dramatico v Sky”)(プライベートベイに関する通信についての差止命令)
・Dramatico Entertainment Ltd v British Sky Broadcasting Ltd (No 2) [2012] EWHC 1152 (Ch)、 [2012] 3 CMLR 15 (“Dramatico v Sky (No 2)”)
・EMI Records Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2013] EWHC 379 (Ch)、 [2013] ECDR 8 (“EMI v Sky”)
・Football Association Premier League Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2013] EWHC 2058 (Ch)、 [2013] ECDR 14 (“FAPL v Sky”)
・Paramount Home Entertainment International Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2013] EWHC 3479 (Ch)、 [2014] ECDR 7 (“Paramount v Sky”)
・Paramount Home Entertainment International Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2014] EWHC 937 (Ch) (“Paramount v Sky 2”)

また、商標の事件にかかるブロッキングの法理が利用されたものとして、カルティエ事件(Cartier、 Montblanc and Richemont v BSkyB、 BT、 TalkTalk、 EE and Virgin (Open Rights Group intervening) [2014] EWHC 3354 (Ch))があります。

(6)判例理論の定着
ブロッキング等の運用状況に関し、上述のように確固たる判例理論が形成されています。

かかる判例にもとづいて、著作権侵害に関してブロックされているサイトについては、2014年11月には93ほどあり 、その後、2015年には85のサイトが追加されています 。実際の運用については、サイトごとにまとめて一覧がある(https://www.blocked.org.uk/isp-results)。

ブロッキング等の運用について、ISPにおいて、判決に対して批判が生じるということは見当たりません。
もっとも、オーバーブロッキングにたいする懸念などは明らかにされてきていた。この点に関してオンラインの人権団体であるOpen Rights Groupは、そのオーバーブロッキングから生じる弊害について警鐘を鳴らしている。法的な手続きとしても裁判所命令が不明確で、誤りがあった場合の訂正方法や異議の申し立て方が明らかにはなっていないと批判している。

当該対策の実効性とも関連して、英国政府が近時のオンラインでの著作物の利用についてなした研究として“Online Copyright Infringement Tracker Wave ” があります。この調査の結果、2013年に比べ音楽やテレビ番組、映画等をダウンロードし利用する人の割合は6%増加し、62%になった。また、合法のサービスを利用してコンテンツを利用する人の割合は2013年に比べ10%増加したが、なお回答者の5分の1は著作権を侵害しているコンテンツにアクセスしています。

また、消費者行動の観点から分析する最新の研究としては、Brett Danaher ほかの“The effect of piracy website nlocking on consumer behavior(消費者行動における著作権侵害サイトのブロッキングの影響)”という研究があり 、注目されています。

この研究の結論としては、パイレートベイに対するブロッキングは、効果としては、それほど存在しない、消費者は、ブロッキングを回避してしまう、ただし、それ以外の侵害サイトに対するブロッキングは、有効であり、Netflix などのサイトへのアクセスを増加させる効果があったというものである。

サイト・ブロッキングは日本でも適法」と米国弁護士、著作権侵害サイトへの対策となるか

「サイト・ブロッキングは日本でも適法」と米国弁護士、著作権侵害サイトへの対策となるか」という記事がでています(ビジネス・ローヤーズ)。

ここで、GEMA事件が引用されています。この事件について、高橋郁夫が社長を務めているITリサーチアートでは、委託調査で、この事件を調べたことがありますので、ご紹介します総務省「諸外国におけるインターネット上の権利侵害情報対策に関する調査研究の請負」(平成27年度)

連邦裁判所は、2015年11月26日、2つの事件(I ZR 3/14事件とI ZR 174/14事件)の上告審として、第三者の著作権法違反に対するアクセスプロバイダの責任に関して判決を出しました 。
(1)I ZR 3/14事件の原告は、音楽の録音・複製を業として行う会社(GEMA)です。

原告は、作曲家、作詞家、音楽出版社のために、音楽作品の著作権法上の使用権を管理しています。
被告はドイツ大手の通信会社であって、電話回線を通じて、顧客のインターネット接続を提供する子会社を運営しています。被告は顧客に対していわゆるアクセスプロバイダとして、「3dfl.am」のウェブサイトへの接続を提供しています。

当該ウェブサイト上に多数のリンク・URL集があり、これら通じて「RapidShare」、「Netload」あるいは「Uploaded」といった共有ホストサイトに違法にアップロードされ、著作権法で保護された楽曲を得ることができ、原告は、原告に管理を委託された著作権について、侵害があり、被告はこのような法律違反を防がなければならないと主張しました。
原告は、被告に対し、被告によって利用設定されたインターネット接続を通じ、第三者にウェブサイト「3dl.am」経由で問題となる楽曲をえることを可能とするリンクを差し止めること請求しました。

州裁判所は請求を棄却し、控訴審も原告の控訴を棄却したが、控訴裁判所が許可した上告により、原告が上告申立てしたものである。

(2)I ZR 174/14の事件の原告は録音機器制作者です。
被告は、顧客にインターネット接続を提供する通信ネットワーク会社(Betreiberin)です。
アクセセスプロバイダとして、被告は顧客にウェブサイト「goldesel.to」への接続を媒介していました。
原告の主張によると、当該ウェブサイト上で、ファイル共有ネットワーク「eDonkey」によって違法にアップロードされた、著作権で保護されるべき楽曲へ誘導するリンク及びURLを得ることができました。 原告は、これは著作権法第85条 によって保護される【レコード制作者の】利用権(Leistungsschutzrechte)に反するとして、原告は被告に対して、被告によって利用設定されたインターネット接続を通じ、第三者にウェブサイト「goldesel.to」経由で問題となる楽曲をえることを可能とするリンクを差し止めること請求しました。

地方裁判所は請求を棄却しました。上級地方裁判所も原告の控訴を棄却しました。控訴裁判所によって許可された上告により、原告が上告申立てしたものです。

(3)
連邦裁判所は両方の手続の上告を棄却した。
連邦裁判所の判断の趣旨は、以下のとおりです。
—-
インターネット接続を提供する通信会社は、原則として、著作権によって保護されている作品を違法に全ての人が取得できるようにするインターネットサイトへのアクセスを妨げることを、権利者から「妨害者(Störer)」として請求されうる立場にある。求められる調査義務に反する限りで、妨害者として、(著作権や著作物の使用権のような)絶対権(absolutes Recht)が侵害された場合は-侵害者又はこれと同視しうる者でない場合で -いかなる方法でも、保護された権利物の侵害に、認識及び相当因果関係(adäquat-kausal)のある寄与をなした者は、これを差し止める義務がある。ドイツ法は,情報化社会著作権法指針(Richtlinie 2001/29/EG über das Urheberrecht in der Informationsgesellschaft)第8条3項の趣旨に従い、指針に合致するよう解釈し、そしてそれ故に、インターネットへの接続媒介者に排除命令を課すことができる余地がなければならない。
著作権法違反の内容を含むインターネットサイトへの接続を媒介する場合は、インターネットサイト「3dl.am」ないし「goldesel.to」の法律違反に対して、通信会社の相当因果関係のある寄与行為が認められる。必要となる期待可能性の衡量においては、 EU法(unionsrechtlich)及び国内の基本法の下で、著作権者の財産権の保護(Eigentumsschutz der Urheberrechtsinhaber)、通信会社の営業の自由、並びにインターネット利用者の「情報の自由」ないし「情報の自己決定権」を、考慮しなければならない。遮断は、インターネットサイトに法律違反の内容が既に掲載されている場合に、それだけで期待できるわけではなく、全体としてみて合法で、違法な内容が重要でない場合もある。インターネットの技術的な構造から生じる回避可能性の問題も、違法な内容へのアクセスを避け、あるいは少なくとも困難にする限りで、遮断命令(Sperranordnung)に問題を生じさせるわけではない。
しかしながら、インターネットへの接続を媒介する企業の妨害者責任は、比例原則の観点から、権利者が相手方-自ら違法行為を行った場合のそのインターネットサイト運営者、-あるいは、そのサービスを行うことによって、侵害行為に寄与したホストプロバイダ-に対して、まず一定の努力をしている場合のみ考慮される。このような当事者の請求が功を奏しなかった、あるいは、功を奏する見込みが全くない場合に、そしてそれ故に、他の手段では権利保護にかけてしまう結果となる場合のみ、アクセスプロバイダへの妨害者責任の請求が認められる。運営者とホストプロバイダは、法律違反そのものについては、インターネットの接続を媒介しているという意味では、本質的に似ている。先んじて請求されるべき相手方に関して、権利者は合理的な範囲内で調査をすべきである。例えば、興信所への委託、インターネット上で違法な申し出を調査する企業への委託、あるいは、国家の調査機関の介入の要請等である。

————-
結局両事件ともこの要件を欠いていると判断しました。

(4)この判決文から何を得るかということになります。

法的な理論としては、
①裁判所の判断によって、媒介者に対して排除命令を課すことは不可能ではなく、それによってEU電子商取引指令や国内法に違反することはない
②具体的な判断に際しては種々の利益が考慮されることになる。
③比例原則の観点から、権利者が、当事者に対する請求をなした場合、もしくは、それが功をそうする見込みが全くない場合に、プロバイダへの請求が認められる
ということになります。
その意味で、この事案は、請求が認められない事件になるので、この①の部分は、法律家の間では、傍論ということになります。
控えめにいって、傍論をもってみずからの論の根拠にすることは、あまり望ましいものではない、ということがいえるかとおもいます。

仮想通貨のTTX

仮想通貨の講演をお引き受けしたら、大規模な仮想通貨流出事件が発生したりと、講演のネタには、困らないわけなのですが、今年の講演は、(なんちゃってですが)TTXを採用してみようかと思っています。

TTXは、机上演習ですが、状況を簡単なシナリオ上で展開した上で、いろいろな問題について、参加者が解決策を検討し合うというものです。NATOで、法律の演習を受けたときは(参加者が全部で30名強)、6名くらいのチームを5チーム作成して、午前中は、チーム内のディスカッション、午後は、代表者の発表とメンターの講評という構成でした。

仮想通貨のTTXもどきになりますが、以下のようなシナリオと質問を考えてみました。

回答は、準備しません。私の講演で考えるヒントを与えることになるかと思います。

(ただし、東洋経済さんに「仮想通貨(2版)」だしてね、とお願いいただければ、ヒントをみなさまにお届けできるかもしれませんね)(Amazonへのリンク)

Day -3Months

次のような大学の時の友人との飲み会での相談があった

ビットコインといった仮想通貨が、世間をすごく騒がしているらしいけど、電子マネーとどう違うの?ビットコインって、世界で初めてだろう? 「貨幣の機能」をもっているのだろう?法律としては、どのような位置づけになっているの?  ビットコインの取引の広告を打っている会社があるけど、そこで、口座を開いて、取引したら、儲かるかな?

この相談であなたは、法律家としての面子を保つことができたか?

(1)仮想通貨って何?

(2)電子マネーとの違い?

(3) ビットコインが、世界で初めての仮想通貨?

(4)貨幣っていう言葉を使っていいの?

(5)ビットコインの取引の広告を打っている会社って、法的には、どのような位置づけなの?

Day-0

友人が血相を変えて、事務所に相談にやってきました。

飲み会のあと、2017年11月に友人がMt.Bitという会社に口座を開設して、ビットコインの取引をしていたそうです。最初のうちは、調子がよかったらしくて、12月に3分の1を売却して利益を確定したそうです。

そうしたら、1月26日、ビットコインが盗難にあったといって、Mt.Bit社は、一切の取引を停止しました。

(1)ビットコインの取引って法的にみたらどういう意味なのでしょうか?

(2)ビットコインの利益を確定した場合に、税金関係は、どうなるのでしょうか?

(3)「取引を停止した」というのは、どのようなことでしょうか?

Day+30

そうこうしているうちに、Mt.Bit社が破産申立をして東京地方裁判所から破産手続開始決定がなされました。Mt.Bit社は、世界的にも有数の取引所であったこともあり、たくさんの債権者もいて、しかも、世界に債権者がまたがっています。 そして、なぜかあなたは、Mt.Bit社の破産管財人に選ばれてしまいました。

 

(1)たくさんの債権者からの債権届出をどのようにして処理していけばいいのでしょうか?

(2)破産法の実定法的な処理との関係は、どうでしょうか?

(3)「大規模破産手続をIT化するのは必然である」という意見についてどのように考えますか?

Day+60

アメリカの債権者が、アメリカ国内でも、Mt.Bit社の破産手続の申立をしました。

アメリカの裁判所から、あなたに対して東京地裁の破産手続開始決定についての意見を求められました。

(1)日本におけるMt.Bit社の破産手続開始決定は、アメリカの裁判所における破産手続の申立中において、どのような効力を有するのでしょうか?

Day+90

東京地方裁判所における破産手続の途中において、ある債権者が、自分は、自分の口座にビットコインで、100BTCを保有しているはずである。なので、私の100BTCは、私のBTCなので、私に引き渡してほしいとして、BTCの価値を有することの確認訴訟を提起してきました。

(1)この確認訴訟において、あなたは、何に注目して、訴訟を遂行しますか?

(2)もし、裁判官になったとしたら、あなたは、どのような判断をするでしょうか?

Day+365

破産手続で換価をはじめとする管財業務をしていたところ、ビットコインの価格が大暴騰しました。その結果、Mt.Bit社が自己のものとして、保有していたビットコインを換価しただけでも、100%の配当ができそうになりました。

(1)口座において仮想通貨「保有」者の債権届出がなされた場合において、その債権者の債権届出に対しては、何時の時点での評価額で、何時の時点で配当がなされることになるのでしょうか?

(2)管財人としては、裁判所の許可を得て保有していたビットコインを徐々に換価していたので、残っていたビットコインの売却では、100%の換価は、実はできません。責任問題は発生するのでしょうか?

Day+400

Mt.Bit社の社長Yがその経営判断の誤りから、Mt.Bit社の情報流失を招いたことが明らかになり、その責任の査定の判断が確定しました。あなたは、社長Yに対して責任の掴取をしなければなりません。

ところが、その社長の財産は、ビットコインだけということが明らかになりました。

(1)どのようにして、社長の責任を追求し、財団を確保することができるのだろうか?

 

 

個人間ネット送金、米で急拡大 銀行や新興企業がしのぎ

個人間ネット送金、米で急拡大 銀行や新興企業がしのぎ 簡便・無料で若者から浸透 という記事がでています。

米国では、このような送金を「ピア・トゥー・ピア(P2P)送金」と呼び、ベンモなどが先行しているそうです。

紙の新聞だとこの隣に「日本、普及はこれから」という記事がつきます。割り勘アプリがあること、楽天銀行では、FBを通じて送金できること、などがふれられています。そこで、お約束の「現金信仰根強い」ので、普及は、もっと先だろうという評価が出てきます。

まずは、LINEペイにきちんと取材しましょうという話があるかと思いますが、それは、さておき、まず、P2P送金というのは、実は、新聞の見出しを賑わすほどには、あまり利用機会がないのではないか、という感じがしています。

そして、ATM送金(他の国だと、どのくらいやっているのでしょうか)が、それなりに使えるので、そんなに不便に思われないというのが、実際なのではないでしょうか。岡田先生のコンジョイントでP2Pの送金機能は、あまり重要度が高くなかったとでたような記憶があります。(新規技術が認容されるための仮説というのは、岡田先生のお得意ね-TAMとかは嫌いだけど、使えるよねと)

小切手で送っていたら、アプリは欲しいでしょうけど、ATMで送れていたらね、そんなに必要だとおもわないんだよね、というところではないでしょうか。ただ、個人的には、チャットでの送金サービスというのは、おもしろいと思っているので、まさに、LINEペイが、どうなの?というのは、興味があります。

「QRコード決済・モバイル決済の利用実態と今後の利用意向に関する調査」の発表

デロイトさんから「QRコード決済・モバイル決済の利用実態と今後の利用意向に関する調査」の発表 というプレスリリースがでています。

電子マネーについて、同種の実験をしたものとしては、興味深いものです。(情報処理推進機構「「eIDに対するセキュリティとプライバシに関するリスク認知と受容の調査」」報告書(平成22年7月発表)

ただし、プレスリリースのみでは、実験の設計や実験の目的が見えない調査に思えます。たとえば、TAMのようなモデルをたてていたのか、とか、どのような仮説があったのか、とかが、よくわかりません。

そこで自分だったらどうい実験の設計をするのか、考えてみました。 QRコード決済・モバイル決済については、今後、きわめて重要なものになるかとおもいます。特に個人的には、メッセンジャー(LINEも含みますが)のプラットフォームと決済の嗜好というのは、実験のしがいがあるように思えます。メッセンジャーのなかだけで、ミニweb的(チャットボットのボタン式みたいなものね)になってそのなかですべてサービスが完結するというのは、今後の方向性としてイケていると考えているので、そのための決済の設計をしなければならないというのが、基本的な調査の動機なハズです。(それを認識できていないとしたら、世界が読めていないとおもいます)

ミニwebで決済するときに、そのプラットフォーマーの決済手段を利用させるというのは、きわめて合理的な経済戦略なので、それを使わせるために商品の見せ方・価格・ポイント戦略をどうするのか、また、販売企業からするときに、どのようなプラットフォームに出品するのか、ということを決めるデータが欲しいはずです。

ここまでくれば、実験を設計できますね。

たとえば、
(1)FBのメッセンジャー、スカイプのメッセンジャー、LINEは、それぞれ、どれが魅力があるのか。
(2)ライバルのプラットフォームに打ち勝つには、決済システムは、差別化の魅力になっているのか。
(3)セキュアプラットフォームは、プラットフォームの魅力になっているのか。
(4)P2P決済の魅力(相互流通性)は、電子マネー(支払い手段性)において、どれだけの魅力になっているのか
という点についてそれぞれ仮説をたてて、それを検証していくとおもしろい調査になったような気がします。(私だったら、質問紙法とコンジョイントを使いますね)

これだったら、いろいろいと売り込めそうに思えます。デロイトさん、お仕事お待ちしています。

GDPR対応メモ 29条委員会のガイドライン一覧

GDPR対応のために、ちょっとメモを作りました。特に、29条作業委員会のガイドラインのドキュメント番号を付してみました。(本家のニュースルームですが、ちょっと見にくいのは、こちら

テーマというのは、英国の情報コミッショナーの「GDPRの概要(Overview of the General Data Protection Regulation (GDPR))」をもとにまとめてみました。EU域内でも大変なことになっているので、いままで、あまり考えていなかった日本の会社さんも大変なことになっているのではないかと考えてしまうところです。

日本企業さんだと、この表に影響度と書いておいたのですが、2018年5月25日の効力発生日にむけて、それまでに対応しなければならない緊急性、従来の指令/国内法体制からみたときに新たな規制となる可能性の高い新規性、日本企業において特に配慮すべきもの要配慮性、の観点から、影響の高い点から、確認をすすめていくということになるかとおもいます。(以下の表で高とつけたのは、あくまでも私の感覚です。)

 

テーマ 具体例 影響度 Art.29 WP
原則 個人の権利/個人データの移転禁止が原則から削除(6原則に)
アカウンタビリティの原則が追加 WP260
考慮すべき重要なエリア 適法な取扱
同意 WP259
児童の個人データ
個人の権利 情報を提供されるべき権利
アクセス権
訂正権
消去権
取扱制限権
データポータビリティの権利 WP242
異議権
自動化された意思決定およびプロファイリングに関する権利 WP251
説明責任およびガバナンス 原則の意義
取扱の記録
データ保護バイ・デザイン
データ保護インパクト評価 WP248
データ保護責任者(オフィサー) WP243
行動規範と認証メカニズム
データ侵害通知 概念、監督機関への通知義務の発生、個人への通知の要否、通知方法、準備 WP250
データ移転 移転の概念
十分性の概念 WP254256257
保護措置に基づく場合
国ごとの適用免除規定 実施法等との関係
処罰の額の大きさ 世界の売り上げの4パーセント など WP253

なお、その他の注目すべき29条委員会のドキュメントとして、LSA(wp244)があります。

 

 

内部通報保護、役員・退職者も 消費者庁、対象を拡大 不正の放置防ぐ

「内部通報保護、役員・退職者も 消費者庁、対象を拡大 不正の放置防ぐ」という記事がでています

ポイントは、消費者庁が、「内部通報制度を強化し、不正を告発しやすい体制を整える。」ということで、そのために、
通報者が嫌がらせなどの不利益を被らないよう、法律で守る対象を現在の従業員から「役員」「退職者」に広げる。
行政機関向けの告発を一元的に受け付ける窓口を同庁に置く。
内部通報は相次ぐ国内メーカーの不正で注目を集めており、体制の充実で迅速に対処し、不正の放置を防ぐ。
ということだそうです。

2017年は、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン 」が改正されて(厳密には、2016年12月)、それに対する対応が説かれていたところですが、さらなる強化がうたわれることになりそうです。

この記事が、具体的にどのような内容につながっていくのか、注目したいところです。特に、内部通報を契機としての不正調査は、実務的にも、デジタル証拠に対するドキュメントレビューを利用した調査などとも深く関連するところがあります。

規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限

「NVIDIAが規約変更によりGeForceのデータセンター利用を制限」という記事がでています。

ここで、「これはNVIDIAの独占的地位を利用した、明らかな地位の濫用と言えます。」という記載があります。これを、思考実験として、わが国の独占禁止法的にどのように考えるのか、ということを考えてみましょう。
ここで、「独占的地位の濫用」といっているので、多分「優越的地位の濫用」といわれている規定を意図しているのでしょうから、具体的に、独占禁止法をみてみましょう。
同2条9項6号ホは、「前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」となっていて、この趣旨は、具体的には、課徴金対象として、別個の条文で規制されることになった
「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。」
という規定(同法2条9項5号)

一般指定13項(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
「13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。」
にその趣旨が表れています。(あとは、特殊指定として、新聞業特殊指定、物流特殊指定、大規模小売業特殊指定ですね。)

でもって、この「優越的地位の濫用」については、いろいろな解釈論が、でています。個人的には、世界的な解釈とできる限り合わせるようにして、市場におけるドミナントポジションの濫用のうち、典型的な行為を定めたと解しています。それはさておき、ライセンス契約の条項の変更について、解釈論としては、上の条項のどれに当てはまるのか、という問題になりますね。条項としては、「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し」に該当するというのでしょうかね。
そうはいっても、「相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」というのは、どういう意味なのか、ということになります。

構成取引委員会のガイドラインをみてみましょう。「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 」があります。

ここでのポイントは、「取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りる」という解されていること、そして、それは、「乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合」となり、それは、「乙の甲に対する取引依存度,甲の市場における地位,乙にとっての取引先変更の可能性,その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する」ということになりますね(同ガイド4頁)。

そうなのと、やっぱりここでも、市場というのが、ポイントになるかとおもいます。「廉価なAI計算に特化したGPU」市場とかがあれば、その市場において、Nvidiaは、優越した地位をもっているのかもしれませんが、実際の判断としては、それは、困難であるようにおもわれます。市場の考え方については、このブログ(市場とその画定)でふれています。(市場の画定は、非常に困難な作業なのですが、現時点では、せいぜいGPU市場というのが通常かとおもいます)

そうだとすると、通常の考え方をすれば、当該市場において、Nvidiaは、優越した地位を有しているわけではないので、特に、その濫用といわれるようなことはしていない、ということになるかとおもいます。

ガイドラインに書いてありますが、「事業者がどのような条件で取引するかについては,基本的に,取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものである。取引当事者間における自由な交渉の結果,いずれか一方の当事者の取引条件が相手方に比べて又は従前に比べて不利となることは,あらゆる取引において当然に起こり得る。」ということになります(2頁)。優越的地位の濫用は、その市場における市場力を濫用して、競争を減殺するのを防止するための制度であって、具体的な契約条件の変更が、資金のない「かわいそうな」弱小当事者を助けるための制度というわけではないということかとおもいます。