対ボットネットの法律問題の総合的考察 その4-法執行機関の積極的行為

政府(法執行機関、その他の政府機関)のボットネット対応について考えてみましょう。

政府は、ボットネットに対して、何ができて、何ができないか、また、何をしなければならないのか、という論点です
ここで、Liis論文をもとに、ドイツの議論をみてみましょう。

法執行機関についていえば、ドイツ刑事訴訟法152条の強制起訴の原則から、法執行機関は、ボットネットに関する十分な事実関係を把握したのであれば、行動をとることが義務付けられます。
刑事訴訟法160条によると、検察庁は、犯罪の嫌疑があることを知った場合、直ちに捜査を開始することになり(同161条)、捜査の終了時に、検察官は、控訴を提起するための十分な根拠があるかどうかを決定しなければならないとのことです。

ボットネットの構築と運営は、複数の刑罰法規に該当するのであり、事実関係が明らかになった場合には、相当な嫌疑を正当化することになるでしょう。この場合には、公訴を提起する義務があることになります。この義務を満たさない場合には、申立人は、公訴を強制する権限を有することになります(同刑事訴訟法172条)。

法執行機関が、強制的な契機をもった活動をなしうるのか、という問題があります。具体的には、法執行機関が、みずから、もしくは、ISPに対して、ボットをテイクダウンするように命じることができるのか、ということです。

ドイツにおいては、連邦警察が、公共の安全を保護しなければならないことを定められています(連邦警察法典70条)。ここでいう、公共の安全には、国民の基本権(基本法2(2)条)、個人の自由(同)、移動の自由(同11(1)条)、家庭の不可侵性(同13条)が具体的に守られるべきものとして含められています。

ボットネット対応は、一次的には、地域警察(regional Länder Police)の管轄と考えられています。もし、ボットネットが、見つかった場合には、警察は、警察法に従って、公共の安全、もしくは、生命、物的インテグリティが脅かされる場合においては、捜索命令(地域警察法41条、42条)もしくは、サーバの没収命令(同43条、44条)を取得することになります。そして、その命令に基づいて、警察は、テイクダウンを行うことができることになります。ISPに対して、C&Cサーバを遮断することを命じて、それに基づいて遮断をさせることは、より制限的ではない介入であると考えられていることから、没収(同43条)の権限に含まれると解されています。

さらに、問題のC&Cサーバが、実際に、公共の安全への危険もしくは公共の秩序の破壊にいたっている場合には、地方警察法の一般規定によってテイクダウンが正当化されうる。そのような場合には、警察は、ボットマスター、C&Cサーバのホスティング者、ISP、感染したコンピュータの保有者に対して、活動を停止するように要求することができます。この要求を拒絶した場合においては、警察は、代替執行の手法をなしえます。

その余の手法としては、警察は、、データやキーストローク、通信、利用者の行動を監視する目的のために、トロイの木馬を利用するオンライン捜索命令を取得するという手法がありますが、議論があるところです。2007年ドイツ連邦最高裁は、オンライン捜索命令は、ドイツの法システムに存在しないとし、オンライン捜索命令は、基本権に対する重大な侵害であるとしました。また、2008年に、オンライン捜索命令は、予防的警察手法であると決定した。これを許容するには、法的な根拠が憲法に備わっていないとならないとしました。それゆえに、このような手法は、ボットネット対策に対しては、適法な選択肢ではないとされています。

では、日本の議論になります。

ボットネットの構築もしくは、運営が刑事法的に犯罪になりうるのか、という問題があります。この点について、日本で議論されている文献は、少ないように思えます。検索した限りでは、夏井先生の「サイバー犯罪の研究(一)――DoS 攻撃(DDoS 攻撃)に関する比較法的検討――」あたりのみでしょうか。

実際には、DDos攻撃/スパムに利用されるわけなので、電子計算機損壊等業務妨害罪(もしくは、通常の業務妨害罪)の証拠となる物件ということになるものと思われます。
ボットネット自体(というか、感染したボットやハーダー・コンピュータ)も、究極的には、
刑法19条1項
次に掲げる物は、没収することができる。
1 犯罪行為を組成した物
2 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
(略)
ということで、「犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物」ということになるのではないか、と考えられます。

なので、ドイツの議論がそのまま適用されることになるのかと思います。もっとも、問題は、その感染したボットやハーダー・コンピュータが、物理的に、国外に存在するという場合です。サイバードメインで行われている行為であっても、その電気通信の伝達に使われる「物」が、物理的に存在している国の法執行機関の権限はおよびます。物を、捜索し、押収すれば、いいわすです。その一方で、海外に存在している場合には、その物理的に存在している国に対して、捜査協力を依頼することになります。ただ、国によっては、協力を要請されたとしても、これに応じないという国があるので、問題が深刻化することになります。

このような観点から、法執行機関が、何らかの強制的契機を有する活動をできないか、という問題になります。

「警視庁、日本標的の不正送金ウイルス「無力化作戦」に乗り出す ボットネット特定し対策」(2015年4月)にあるように、無力化作戦として、どのような手法が使えるかということになります。
これについては、むしろ、民間企業がなすことができるのか、という話を検討した方がいいので、そのところで検討することにします。

対ボットネットの法律問題の総合的考察 その3

「対ボットネットの法律問題」というのは、結局、関係者が、ボットネット攻撃に対して、法的に、何ができて、何ができないか、また、何をしなければならないのか、という問題ということができるでしょう。

関係者

ここで、関係者といった場合に、ISPや法執行機関、学術研究者、企業、政府機関などがあげられることになります。ちなみに、Liis論文でも、これらについて検討しています。

これらの関係者は、大きくわけると、政府(法執行機関、その他の政府機関)、インターネット中間者、民間(研究者、セキュリティ企業、被害企業)にわけることができると思います。

可能な行為

何ができるか(何ができないか)というのは、具体的には、攻撃者にたいしての積極的な反撃行為、積極的な情報取得行為、消極的な情報取得行為などの問題があります。この点について検討しておかなければならないのは、強制力は国家が独占しているという原則ということになります。要は、自力救済(redress)は、原則として禁止されており、例外的な場合に限って許容されるということです。これは、国際的な関係でも適合します。外国に対するサイバー力の行使(この概念自体、また別個の議論を必要としますが)は、その他国の主権の侵害等に問われることがあるというのが一般理論になります。

「強制力が国家が独占している」という原則は、(1)国家が、独占して行使しうる強制力というのは、どのようなもので、法執行機関、諜報機関および軍隊は、いつ、どのような行為をなしうるのか、また、それらの法的な位置づけはどのようなものか、という論点 (2)ISPや民間が、いろいろななす行為は、「強制力」の国家独占の原則との関連で、禁止されているのに該当するのではないか、また、逆に、許容される場合は何か、という論点を含むことになります。

(1)の論点は、捜査権限の問題であり、私の論文でいうと、リーガルマルウエアの問題も含まれてくることになります。

(2)の論点は、防衛行為の許容性の問題、また、許容される場合に注目した場合には、アクティブサイバー防衛の問題になってきます。

関係者の義務と責任

何をしなければならないのか、というのは、なすべき作為義務という観点と、それを怠った場合に損害が生じた場合の責任という観点から、分析されるということになります。

このように問題点のマッピングをしたのちに、すこし、順番を変えて、関係者の義務と責任の観点から、問題点についてのドイツの立場をLiis論文をみながらふれていくことにしましょう。

 

 

対ボットネットの法律問題の総合的考察 その2

EUにおけるサイバーセキュリティの政策と規則の動向について検討していきます。この分野は、わが国において、誰も、フォローしていない論点になるかと思っています。

ボットネット対応は、EU法においては、EUにおける情報社会に関する対応という大きなプログラムの中の一部として位置づけられています。
大きなプログラムのなかの法について、考えると、EU法については、条約や法的規範の体系があることになります。そしてこの法的規範というのには、具体的に規則や指令が含まれることになります。
電気通信に関して、EU法が対応している従来の分野は、1)データ保護/電気通信フレームワーク2)サイバー犯罪 3)ネットワークおよび情報セキュリティ があるとされます。この3つの分野については、以下の図であらわすことができます(下記の2001年コミュニケ 3頁)。

 

データ保護/電気通信フレームワークについては、「データ保護指令」「eプライバシ指令(2002/58/E.C)」や電気通信枠組があります。

電気通信枠組は、2002年の「枠組指令(2002/21/EC)」、「認証指令(2002/20/EC)」、「アクセス指令(2002/19/EC)」、「ユニバーサル・サービス指令(2002/22/EC)」、BEREC規則、ローミング規則などで論じられることになります。これらについては、電気通信の規制枠組みにまとめられています。

サイバー犯罪の問題については、ヨーロッパ内部においては、1999年の欧州協議会のタンペレ・サミットにおけるハイレベルのアジェンダにおいて、ハイテク犯罪について共通の定義、犯罪化、制裁について努力がなされるべきであるとされたのが一つの契機となります。(より、広範囲においては、サイバー犯罪条約の活動があり、それも重要ですが、ここでは、割愛します)

2000年には、欧州協議会と委員会のeヨーロッパ2002アクションプランにおいて、サイバー犯罪に対して対抗する努力が求められました。

2001年においては、欧州委員会は、情報インフラのセキュリティを改良して、「コンピュータ関連犯罪と戦うことによってより安全な情報社会を創造する」というコミュニケを公表しています( Communication from the Commission to the Council, the European Parliament, the Economic and Social Committee and the Committee of the Regions – Creating a Safer Information Society by Improving the Security of Information Infrastructures and Combating Computer-related Crime. COM(2000)890.)。このコミュニケにおいては、ハッキングとサービス妨害攻撃に対する対応が重要であるとされています。

これと並行するように、情報社会に対する対応の一つとして「ネットワークと情報社会:ヨーロッパの政策アプローチ」という2001年コミュニケ(Communication from the Commission to the Council, the European Parliament, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions – Network and Information Security: Proposal for A European Policy Approach. COM(2001))があり、そこでは、情報セキュリティに関して、上記の3つの異なった分野について、情報社会のためにセキュリティでなすべき事項があるとしています。

このコミュニケに導かれたネットワークおよび情報セキュリティポリシが、これらの分野を橋渡しになるだろうとされており、このポリシにおいては、意識向上、ヨーロッパ警告情報システム、技術支援、市場思考の標準化および認証の支援、法的枠組、政府におけるセキュリティ、国際協調が手法として提案されています。

2002年には、サイバー犯罪対応の文脈において、情報システムに対する議会枠組決定の提案がなされていて、2005年には、この枠組決定がなされています。この枠組決定において、違法アクセス(2条)、違法システム妨害(3条)、違法データ妨害(4条)が定められ、構成国は、これらの規定を国内法化することになりました。(もっとも、サイバー犯罪条約でも、同様の規定はあります)

2006年には、スパム通信やマルウエアについてのコミュニケが明らかにされています(Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions on fighting spam, spyware and malicious software. COM(2006)688)。

2007年5月には、さらにサイバー犯罪にたいしての一般ポリシについてのコミュニケ(Communication from the Commission to the European Parliament, the Council and the Committee of the Regions – Towards a General policy on the fight against cyber crime. COM(2007)267)が明らかにされています 。このコミュニケにおいては、サイバー攻撃は、インフラに対して向けられていて、社会全体に対して、災害を引き起こしかねないとしています。また、国家間におけるハーモナイゼーションをもうたっています。

前記の枠組決定につながるものとして欧州委員会は、欧州議会に対して評価報告を提出しています(2008年7月)。この報告は、ボットネットの悪用から生じる脅威を効果的に対応することから始まっています。

この当時は、並行して、当時、EUにおけるネットワークおよび情報セキュリティに関する政策は、重要インフラ防衛に向かっていました。2009年には、CIIPについての最初の規制がなされた。「大規模サイバー攻撃/破壊から欧州を防衛する」というコミュニケが明らかにされています。

さらに、2010年の9月には、欧州委員会は、いわゆる「ボットネット指令」についての提案を行っています。この指令の目的は、犯罪者を起訴し、有罪を認定し、国際協力とともに、欧州から/に対する大規模な攻撃を抑止/または、減少させることにあります。このボットネット指令は、2013年に指令として成立しています 。この指令は、従来の規定に加えて違法傍受の規定とハッキングツールの処罰規定を定めるように求めるものです。

ヨーロッパの情報セキュリティに関する法と政策の経緯をまとめてみました。いままで、このような形でまとめたものが、見当たらないので、簡単ではありますが、何かの役にはたつのではないかという気もします。

対ボットネットの法律問題の総合的考察 その1

対ボットネットの法律問題の総合的考察とでもいうべきメモを以下にふれていきたいと思います。

2015年のNATOのサイバーセキュリティの国際法コース受講の際に、講師をされていたLiis Vihulさんが筆頭の著者である「Legal Implications of Countering Botnets」という報告書を分析する機会がありました。この論文は、CCDCoEとENISAの共同報告書であり、2012年に作成されています。

この論文は、2012年に作成されているものですが、現時点においても、きわめて深い分析をなしているものということができます。具体的には、ボットネットにたいする手法の適法性と対抗すべき義務の問題を、EU法制をながめながら、エストニア・ドイツの各国内法の観点から分析してます。この報告書の紹介をかねながら、場合によっては、わが国における対応についても比較対象していくことにしましょう。

わが国において、ネットワークセキュリティと通信法制との関係についての研究論考が、まったくといっていいほど存在していないというのに比較して、きわめてレベルの高い、興味深い論文であり、しかも、ドイツ法とエストニア法の具体的な仕組みも同時に比較することができるので、きわめて有意義なものだと考えます。

この報告書の議論点は、ボットネットの説明部分、EUにおける政策と規則の動向(EUROPEAN UNION POLICY AND REGULATORY BACKGROUND – MOVING TOWARDS THE CRIMINALISATION OF BOTNET-RELATED ACTIVITIES)、具体的なボットネット対抗の問題(FIGHT AGAINST BOTNETS – TOUCHING THE LIMITS OF EXISTING LAWS)にわけられています。もっとも興味のあるボットネット対抗の問題は、さらに大きくわけると二つのセクションにわけることができます(もっとも論文自体は、わけて論じているわけではないです)。その一つは、(1)ボットネットによる攻撃に対する対抗するための関係者の法的位置づけ、であり、いま一つは、(2)ボットネットにたいする対抗手段の法的位置づけです。

具体的には、
(1)ボットネットによる攻撃に対する対抗するための関係者の法的位置づけ、
  ボットネット攻撃に対する対抗すべき義務
  感染ホストの保有者の責任問題
(2)ボットネットにたいする対抗手段の法的位置づけ
  パケットおよびトラフィック記録の取得・分析
  ハニーポット
  コマンドコントロールサーバのテイクダウン
  ボットネットの乗っ取り(テイクオーバー)
  自動的検疫/解毒(Automated Immunisation or Disinfection)
  例外状況におけるボットネット対応技術の問題(Botnet Mitigation Techniques under Exceptional Circumstances)
です。

タイトルを見ただけで、分析内容が楽しみに思えますね。次のエントリは、EUの性格部分を分析してみましょう。

岡田仁志著「決定版 ビットコイン&ブロックチェーン」

岡田先生より「決定版 ビットコイン&ブロックチェーン」を献本いただきました。

2015年4月に岡田先生、山崎先生と仮想通貨を出版したのですが、その後の3年間の進展はすさまじく、仮想通貨関係では、いわゆるFinTech法の通貨があり、マネーロンダリング関係では、アルファベイのオペレーションがあって、さらにビットコインのハードフォーク、コインチェック事件などときわめててんこ盛りな状態です。

このような混沌とするビットコイン・ブロックチェーンに関する状況の客観的かつ平易な解説としてのまさに決定版として出版されたのが本書という位置づけになるかと思います。

特に仮想通貨の分裂(3章)、ブロックチェーンエコノミーの時代(4章)などは、この数年の進展を整理しているものということができるかと思います。

その一方で、仮想通貨の法的な規制をめぐる議論、ゲーム内アイテム交換価値の議論、ICOブーム、アルファベイ事件など、サイバーペイメントまわりの議論としては、ふれていないものもあります。それらについては、今度は、私の順番になるのかもしれません。

仮想通貨をめぐる本については、昨年来の投機ブームをあおるかのような本が売れているように思えますが、表面的なブームから一歩踏み込んで、きちんと学びたい人にとっては、購入すべき学問的な裏付けのある本としておすすめできると思います。

 

EUにおける著作権執行に関する議論

EUにおける著作権の保護の流れについてみていくことにしましょう。

(1)まずは、2000年代中盤までの動きについては、情報処理推進機構に対する報告である「情報セキュリティに関連するソフトウェアの取扱いに係る法律上の位置付けに関する調査」報告書で触れられています(特に報告書24頁以下)。

特に知的財産権行使指令(Directive 2004/48/EC on the enforcement of intellectual property rights) の内容及び運用は、極めて重要なものであるといえます。

著作権指令第8条(3)は、「構成国は、権利者が、著作権若しくは関連する権利を侵害するために第三者によって利用されている媒介者に対しても差止命令を申し立てる立場にあるようにしなければならない」と定めています。

また、知的財産権行使指令においては、証拠保全手続、侵害配布ネットワークや侵害品の出所に関する情報開示の定め、そのための差止命令の定め、審理後の救済手段などが論じられている。同指令11条(差止命令)は、「構成国は、知的財産権に対する侵害があるという司法的判断がなされた際において、司法権が、侵害者に対して継続的な侵害を差し止める差止命令をなすことができるようにしなければならない。(略)構成国は、権利者が、第三者によって利用されている媒介者に対しても著作権(2001/29/EC)指令第8条(3)に反しない限り、差止命令を申し立てる立場にあるようにしなければならない」としています。

ドイツのGEMA事件やイギリスの一連のNewsBin事件などは、これらの規定を前提に理解しないといけないような気がします。

(2)具体的な執行に関する論点

著作権の執行についていえば、具体的には、著作権者が、権利侵害をなしている者のIPアドレスを取得して訴訟を提起するという場合もあるし、また、インターネット媒介者に対してブロッキングを求めるという形態の訴訟を提起する場合もあります。

前者の場場合、権利者が、IPアドレスから本人を識別する個人データ(例えば、身元や住所など)を権利者に対して開示することができるのかという論点が存在する。

この点についてのEUの判決は、Case C-275/06、 Productores de Música de España (Promusicae) v Telefónica de España SAU [2008] ECR I-00271 になります。

申立人は、音楽及びオーディオ・ビジュアルの制作者・発表者からなるNPOです。ISPである相手方に対して、KaZaA を利用して違法に著作物をシェアしていたことが分かっているIPアドレスから身元・物理的住所を明らかにするように命じた事案であって、マドリッド商事裁判所は、これを認め、明らかにするように命令を出しました。これに対して、相手方が、刑事事件捜査のため、又は公共の安全・国家防衛のためでなければならないのではないかとして控訴した事件である。
本件では、著作権指令、電子通信指令、著作権執行指令などとデータ保護指令との関係が問題となったので、EU裁判所の判断が求められました。

裁判所は、
電子通信指令は、トラフィックデータに関しての秘密を確保するための義務を求めるが、それを制限することは一定の例外のもとに認められることをも規定しているとし、それが民事手続のために許容されるかが問題であるとしました。同指令15条(1)は、データ保護指令の13条(1)の規定を例外として挙げるものとしており、同条項は、権利及び自由の保護のための例外を許容するものである。したがって、民事手続のための開示の可能性を除外するものではないと判断しています(パラ53)。

(3)差止に関するリーディングケース

また、後者のインターネット媒介者に対する差止命令の問題について、参考とされるべき欧州裁判所の判決例としては、Google v LVMH事件(2010) 、L’Oreal v eBay事件(2011) 及びScarlet Extended SA v Société belge des auteurs、compositeurs et éditeurs SCRL (SABAM)事件(2011)があります。

(ア)Google v LVMH事件(2010)

Google v LVMH事件(2010)は、LVMH(ルイ・ヴィトン等の商標権者)がGoogleの検索結果に対して、スポンサードリンクで、イミテーションのルイ・ヴィトンの商品がイミテーションやコピーとの文言とともに掲示されることに対して、登録商標を侵害しているという宣言判決を求め、地裁・控訴審において、侵害が認められており、それに対して、法的な見地から控訴した事件である。ここでは、インターネット参照サービスプロバイダが宣伝をディスプレイすることは、禁止される登録商標の使用行為に該当しないという判断がなされています。

(イ)L’Oreal v eBay事件(2011)

 これは、種々の登録商標を有している申立人が、相手方(eBay)に対して、登録商標を侵害している物品の販売に対しての懸念を示す手紙を送付したが、その対応に満足せずに、共同体商標である‘Amor Amor’と英国の登録商標である‘Lancôme’を示す17商品の販売に責任があるという判断を求めた事件です。この17商品が偽造品であることは当事者間に争いはありませんでした。

この事件において英国の高等法院は、侵害は認めたものの、多くの論点が欧州裁判所の判断にかかっているとしたものである。

この事件に関しては、種々の論点が議論されているが、10番目の質問は、欧州裁判所による「著作権行使指令(2004/48)の11条は、構成国に対して、知的財産権の保有者に対して、オンラインマーケットの運営者のようなウェブサイトの運営者に対して、侵害された権利によって、運営者が、将来の侵害を防止する手段をとるように要求する差止命令を要求することができるか、もし、それであれば、その手段は何であるのか」というものです。

前者に関しては、同裁判所は、マーケットプレイスを通じてなされる侵害に対して、侵害を終了させるというもののみではなく、さらなる侵害を防止するものでなくてはならない(パラ131)と判断しています。そして、後者に関しては、効率的で、抑止的(dissuasive)でなければならないとしています(パラ136)。
具体的には、プロバイダに対してアクティブモニタリングを義務付けるものではならこと(同139)、適法な取引に対する障壁となるものではないこと(特定の商標を有する商品の販売禁止になったりしないようにすること)(同140)、権利侵害にオンラインサービスを利用したとものに対しての効果的な救済策を確かにするために、販売者を識別することを容易にすること(同142)を命じることができるとしたのです。
もっとも、その具体的な方策は、各構成国の裁判所に委ねられたのです。

(ウ)Scarlet Extended SA v Société belge des auteurs、 compositeurs et éditeurs SCRL (SABAM)事件(2011)

Scarletは、顧客にインターネットへのアクセスを提供するISPであって、ダウンローディングやファイルシェアリングなどのサービスは、提供していなません。一方、SABAM は、音楽著作物の著作者、作曲家、編集者を代表し、第三者に対する許諾をなす管理会社です。

2004年11月26日、ベルギーの審判所は、著作権の侵害があったとし、専門家に対して、実際に、SABAMの提案する技術的解決策 が、技術的に違法なファイル共有のみを遮断(filter out)するのか、ピア・ツー・ピア型の使用をモニターする他の手法があるかどうか、手法のコストはいくらかを調査させました。この調査結果によれば、完全な規則に基づいて違法な電子ファイルのシェアリングをフィルターし、ブロックすることはできないものとされました。
2007年6月29日の判決において、審判所は、Scarletに対して、利用者が、SABAMのレパートリーに属する音楽作品を含むファイル全てを受信若しくは送信することを不可能にするようにし、終了させることを命じました。
これに対して、Scarletは、①システムのフィルタリングとブロッキングの効率性と成果は、証明されておらず、実装するための設備も実際上の困難に遭遇することから、技術的差止命令に応じることは困難であること、②システムに対して、一般的な通信のモニタリングを命じることになり、2000/31指令15条を実装する2003年3月11日法11条に違反することになる、③フィルタリングシステムの実装は、EU法の個人データ保護及び通信の秘密の法に違反する(というのは、そのようなフィルタンリグは、IPアドレスの処理を行うことになり、それは、個人データであるからである)として、控訴を申し立てました。
控訴裁判所は、手続を中止し、予備的判断のために、事件をEU裁判所に回付しました。

EU裁判所は、この問題について、判決において、上記L’Oreal v eBay事件(2011)における判断に依拠し、差止命令は、ISPに対して一般的にモニタリングを義務付けるものであってはならないことを述べました(パラ38)。

そして、その観点から、ベルギーの判決は、全ての利用者に対して、著作権の侵害に対して将来においても、防止するように積極的なモニタリングを義務付けるものであって、著作権行使指令第3条に違反する。差止命令として許容しうるものとしては、①ピア・ツー・ピアに関するトラフィックのみを識別するものであること、②著作権者が侵害されたと主張するファイルを識別すること、③それらのファイルのうち、違法にシェアされたものを決定しうるもの、④違法と思慮されたファイルシェアリングをブロックすることの全ての要件を満たさなければならない。したがって、これを満たしていないベルギーの裁判所の命令は、著作権指令15条(1)に違反する。また、この判断にあたっては、他の基本権とのバランスも考慮されなくてはならないし、ISPなどの運営者の事業を営む自由とのバランスも考慮されなくてはならない。著作権指令との関係のみではなく、ISPの利用者である個人の個人データ保護、情報を受領する自由とのバランスを侵害するものであると判断したのです。

その結果、EU裁判所は、上述の差止手法を採用することは排除されるべきであるとしたのです。

英国におけるISP等に対する著作権侵害通信遮断義務づけ判決について

株式会社ITリサーチ・アートの調査でいうと、英国において、NewsBin事件が、判決によるブロッキングとしての理論的な意味を有しているので、ここで、紹介できるかとおもいます。

英国の裁判所は、一連のNewzbin事件において、アクセスの停止を命じる判断をなしています。

具体的には、次の3つの判断があります。
①Twentieth Century Fox Film Corporation and others v Newzbin Ltd [2010] EWHC 608 (Ch))
②Twentieth Century Fox Film Corp & Ors v British Telecommunications Plc [2011] EWHC 1981 (Ch) (28 July 2011)
③Twentieth Century Fox Film Corp & Ors v British Telecommunications Plc [2011] EWHC 2714 (Ch) (26 October 2011)

(1)MewsBin(その1)
判決①は、映画会社とNewzbinを保有し、運営する会社との間の訴訟です。

NewzbinはMr Chris Elsworth (“Caesium”)、 Mr Thomas Hurst( “Freaky”)、 Mr Lee Skillen ( “Kalante”)によって運営されていました。

Newzbinは、Usenet(ユーズネット)のコンテンツのインデックスサイトです。それ自体としては、ファイルの提供も、アップロードもしていません。
Newzbin は、ユーズネットのメッセージを検索し、ヘッダー情報を「素“RAW”」 「凝縮“Condensed” 」「ニューズビン “Newzbin” 」の3つのインデックスに処理します。また、Newzbinは、XML言語をベースにした情報ファイルであるNZBファイルにより、あちこちに散らばっているユーズネットへの投稿の断片の自動収集を可能にしました。

Newzbinはアニメ、 アプリ、書籍、コンソール、エミュレーション、ゲーム、その他、映画、音楽、パーソナル機器用(PDA)、リソース、テレビなどのカテゴリーにインデックスを分けています。また、これらのカテゴリーは、サブカテゴリーの分類がなされています。コンテンツにどのようなものがあるかというバイナリの レポートは 、エディターにより作成されており、エディターは、有給です。2010年の段階で、250人ほどいたとされています。

エディターに対して違法な著作権侵害ファイルやチャイルドポルノなどを幇助することはできないとコメントされていたのですが、裁判所は、これは飾り物(cosmetic)にすぎず、実際は、遵守されていなかったと認定しています。裁判所は、同サイトのレポートの内容については、ほとんどが、著作権侵害へのインデックスであると判断しています。
Newzbin社は、裁判において、著作権侵害の事実は知らなかったといったのですが、尋問の結果やメールなどの証拠からこのような主張は採用されませんでした。

裁判所は、
1988年著作権・意匠・特許法16条は、映画の著作権は、第三者に対して著作権によって侵害されている行為を許諾(authorise)するものによって侵害されると定めているとしました。そして、上記Newzbinの行為が、上記「許諾」概念に該当するかどうかという点について、考察の結果、該当性を認めて、Newzbinの行為が著作権を侵害することを認めました。そして、同法9第7条Aに基づいて、差し止めをなすことを認めました。

同法97条A(サービスプロバイダに対する差止命令)は、

⑴ 高等裁判所(スコットランドにおいては民事控訴院)は、サービスプロバイダが、実際に著作権侵害を利用しているのを現実に悪意である(actual knowledge)場合に、差止命令を下す権限を有する

⑵ サービスプロバイダが、本条の目的に関し、現実に 悪意であるかどうかは、裁判所は、関連する全ての事実を考慮すべきであり、特に、

(a)2002年電子商取引指令規則6条(1)(c)に定める連絡手法によりなされた通知を受領しているかどうか

(b)通知を送付したものの氏名及び住所を含んでいたか、どうか

と定めています。

申立人らは、全ての著作権侵害に対する広範な差止命令を求めたが、裁判所は、権利者にもとづくもののみが認められると解されること、Newzbin社が、全ての著作権侵害について現実に悪意であることは考えられないことなどから、具体的に特定されている著作権に限っての差止命令を命じました。

(2)判決②及び③は、映画会社とブリティッシュ・テレコム(BT)との間の訴訟です。

判決②の事件の申立人らは、有名な6つの制作/映画会社(20世紀フォックス、ユニバーサル、ワーナー、パラマウント、ディズニー、コロンビア)であり、映画やテレビの制作と配給をおこなっているスタジオである。一方、相手方は、BTであり、申し立ての趣旨は、1998年著作権法97条Aに基づいて、差止命令を求めた事件です。

具体的には、BTの利用者に対して、Newzbin2サイトに対してアクセスすることを妨げる(impede)差止命令を求めたものです。

上記①事件において、Newzbin1サイトは、運営を停止したが、同じURLで、新たなNewzbin2サイトが、運営を開始し、その運営者が不明であったため(オフショアと思われる)に、申立人らとしては、BTに対して差止めを求めるのが可能な方策ということになったのです。
(3)NewsBin(その2)

判決は、著作権侵害の問題についての認定(パラ19-22)し、これに対して、解決策についての議論を行っています(23-)。

判決は、Newzbin1事件の経緯を述べ(25-44)、Newzbin社は、任意清算をすることになり、運営を停止した。しかし、同様のNewzbin2が運営を開始することになる(45-47)。ウェブサイトにおいて、このNewzbin2は、2という数字の後に、NEWZBINという文字が現れるものであって、実質的には、Newzbin1と同様である(48)。Newzbin1と同様に、英国の利用者を基盤としており(49)、商業的に利用可能な著作物が94パーセント以上を占めるとされ(50)、また、映画及びテレビがその中心である(51-55)。そのサイトは、匿名で運営されている(56-)。BTは、英国最大のインターネット加入者であり、インターネットアクセスサービスを提供している(59-)が、Newzbin2のウェブサイトをホストしているわけではない(63)としています

このあとの具体的な判断としては、
判決は、Internet Watch Foundation (IWF)のブロッキングシステムを論じ(65、66)、ISPの採用する技術一般(DNS name blocking、IP address blocking using routers、DPI-based URL blocking using ACLs on network management systems)を説明した後(71)、 B Tの採用するCleanfeed技術を論じています(73-)。
その後、判決では、法的な問題として、1998年人権法(The Human Rights Act)/欧州人権条約の規定(76-78)、電子商取引指令(79-82)、2002年同規則(83)、情報社会指令(84-85)、2003年著作権規則(86)、著作権行使指令(87-90)、同規則(91)などが紹介されています。
判決は、その後、種々の論点を検討することになる。

EU指令の解釈・他の判決例、管轄権に関する論点、具体的には、BTが侵害に利用されていないこと、実際に知らないこと、電子商取引指令第12条(1)違背、同指令第15条(1)違背、欧州人権条約第10条違背などについての議論をなしています。
また、BTは、仮に命令がなされたとしても、申立人らは、全てのNewzbin2ウェブサイトに対して利害を有しているわけではないこと、多数の要求が爆発してしまうこと、効能の観点から妥当ではないこと、比例原則に反することを理由として、現実的ではないというが、それぞれ、採用することはできないとして、映画会社の主張する命令を認めました。

その命令の主文は、
1. 相手方は、現在、www.newzbin.comやそのドメイン又はサブドメインでアクセス可能なNewzbin 若しくはNewzbin2に向けて、以下の技術を採用しなければならない。
(ⅰ)上述のウェブサイトが運営する、若しくは、利用可能なそれぞれ全ての IP アドレスであって、申立人若しくはその代理人から、書面で通知されるものに関するIPアドレスブロッキング
(ⅱ)最低でも、上述のウェブサイト及びドメイン/サブドメインにおいて利用可能なそれぞれのURLであって、申立人若しくはその代理人から、書面で通知されるものに関するDPI 基盤ブロッキング
2. 疑いを回避するために、もし、相手方が、クリーンフィードとして知られる技術を採用する場合には、詳細な分析を利用するDPIブロッキングを採用する必要はなく上記1(ⅰ)and(ⅱ)に適合するものである
3. (略)
というものでした。

(4)NewsBin(その3)
判決③の事件は、上記判決②の事実関係を前提に、状況が変更したこと、また、Desmond McMahon氏というBTの利用者が裁判に参加した上で判決②事件の差止命令の表現(The wording of the injunction)についての判断がなされています。

上記差止命令の表現については、IPアドレスブロッキング・再ルーティング、英国小売・大衆市場サービス、他のIPアドレスの論点があるとしている(5-)。
IPアドレスブロッキング・再ルーティングというのは、クリーンフィード技術の表現の訂正であり(6)、英国小売・大衆市場サービスというのは、同技術が、小売・大衆市場サービス向けのサービスになっており、申立人らは、大企業・官庁向けにもそのようなサービスの提供をもとめていたが、判事は、その拡張を妥当とは考えないということが述べられている(8)。②判決以降、BTのブロッキングの制限を回避するクライアントソフトウェアが利用可能になった。申立人としては、特定された以外のIPアドレスを拡張することを望んだが、それを限定するのに、申立人の提案する「Newzbin2のウェブサイトにアクセスすることを提供することを唯一の若しくは、主たる目的とするIP アドレス」という表現が望ましいと判断している(10-12)。

また、判決は、他のISPに対する請求との関係(13-15)、一時的遮断(16-18)、(コスト算定に関する)ノーウィチ・ファーマカルとの類似性(19-31)、命令実行の費用(32-)、BTの損害担保(34-)、申立のコスト(53-)についての議論をしている。
判断としては、具体的な命令が、上記判決②の命令が、表現が訂正されて、言い渡されている。

(5)判例理論としてのブロッキング
また、英国においては、同様の判決として、以下のものがあり、確固たる判例理論を形成しています。

・Dramatico Entertainment Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2012] EWHC 268 (Ch)、 [2012] 3 CMLR 14 (“Dramatico v Sky”)(プライベートベイに関する通信についての差止命令)
・Dramatico Entertainment Ltd v British Sky Broadcasting Ltd (No 2) [2012] EWHC 1152 (Ch)、 [2012] 3 CMLR 15 (“Dramatico v Sky (No 2)”)
・EMI Records Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2013] EWHC 379 (Ch)、 [2013] ECDR 8 (“EMI v Sky”)
・Football Association Premier League Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2013] EWHC 2058 (Ch)、 [2013] ECDR 14 (“FAPL v Sky”)
・Paramount Home Entertainment International Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2013] EWHC 3479 (Ch)、 [2014] ECDR 7 (“Paramount v Sky”)
・Paramount Home Entertainment International Ltd v British Sky Broadcasting Ltd [2014] EWHC 937 (Ch) (“Paramount v Sky 2”)

また、商標の事件にかかるブロッキングの法理が利用されたものとして、カルティエ事件(Cartier、 Montblanc and Richemont v BSkyB、 BT、 TalkTalk、 EE and Virgin (Open Rights Group intervening) [2014] EWHC 3354 (Ch))があります。

(6)判例理論の定着
ブロッキング等の運用状況に関し、上述のように確固たる判例理論が形成されています。

かかる判例にもとづいて、著作権侵害に関してブロックされているサイトについては、2014年11月には93ほどあり 、その後、2015年には85のサイトが追加されています 。実際の運用については、サイトごとにまとめて一覧がある(https://www.blocked.org.uk/isp-results)。

ブロッキング等の運用について、ISPにおいて、判決に対して批判が生じるということは見当たりません。
もっとも、オーバーブロッキングにたいする懸念などは明らかにされてきていた。この点に関してオンラインの人権団体であるOpen Rights Groupは、そのオーバーブロッキングから生じる弊害について警鐘を鳴らしている。法的な手続きとしても裁判所命令が不明確で、誤りがあった場合の訂正方法や異議の申し立て方が明らかにはなっていないと批判している。

当該対策の実効性とも関連して、英国政府が近時のオンラインでの著作物の利用についてなした研究として“Online Copyright Infringement Tracker Wave ” があります。この調査の結果、2013年に比べ音楽やテレビ番組、映画等をダウンロードし利用する人の割合は6%増加し、62%になった。また、合法のサービスを利用してコンテンツを利用する人の割合は2013年に比べ10%増加したが、なお回答者の5分の1は著作権を侵害しているコンテンツにアクセスしています。

また、消費者行動の観点から分析する最新の研究としては、Brett Danaher ほかの“The effect of piracy website nlocking on consumer behavior(消費者行動における著作権侵害サイトのブロッキングの影響)”という研究があり 、注目されています。

この研究の結論としては、パイレートベイに対するブロッキングは、効果としては、それほど存在しない、消費者は、ブロッキングを回避してしまう、ただし、それ以外の侵害サイトに対するブロッキングは、有効であり、Netflix などのサイトへのアクセスを増加させる効果があったというものである。

サイト・ブロッキングは日本でも適法」と米国弁護士、著作権侵害サイトへの対策となるか

「サイト・ブロッキングは日本でも適法」と米国弁護士、著作権侵害サイトへの対策となるか」という記事がでています(ビジネス・ローヤーズ)。

ここで、GEMA事件が引用されています。この事件について、高橋郁夫が社長を務めているITリサーチアートでは、委託調査で、この事件を調べたことがありますので、ご紹介します総務省「諸外国におけるインターネット上の権利侵害情報対策に関する調査研究の請負」(平成27年度)

連邦裁判所は、2015年11月26日、2つの事件(I ZR 3/14事件とI ZR 174/14事件)の上告審として、第三者の著作権法違反に対するアクセスプロバイダの責任に関して判決を出しました 。
(1)I ZR 3/14事件の原告は、音楽の録音・複製を業として行う会社(GEMA)です。

原告は、作曲家、作詞家、音楽出版社のために、音楽作品の著作権法上の使用権を管理しています。
被告はドイツ大手の通信会社であって、電話回線を通じて、顧客のインターネット接続を提供する子会社を運営しています。被告は顧客に対していわゆるアクセスプロバイダとして、「3dfl.am」のウェブサイトへの接続を提供しています。

当該ウェブサイト上に多数のリンク・URL集があり、これら通じて「RapidShare」、「Netload」あるいは「Uploaded」といった共有ホストサイトに違法にアップロードされ、著作権法で保護された楽曲を得ることができ、原告は、原告に管理を委託された著作権について、侵害があり、被告はこのような法律違反を防がなければならないと主張しました。
原告は、被告に対し、被告によって利用設定されたインターネット接続を通じ、第三者にウェブサイト「3dl.am」経由で問題となる楽曲をえることを可能とするリンクを差し止めること請求しました。

州裁判所は請求を棄却し、控訴審も原告の控訴を棄却したが、控訴裁判所が許可した上告により、原告が上告申立てしたものである。

(2)I ZR 174/14の事件の原告は録音機器制作者です。
被告は、顧客にインターネット接続を提供する通信ネットワーク会社(Betreiberin)です。
アクセセスプロバイダとして、被告は顧客にウェブサイト「goldesel.to」への接続を媒介していました。
原告の主張によると、当該ウェブサイト上で、ファイル共有ネットワーク「eDonkey」によって違法にアップロードされた、著作権で保護されるべき楽曲へ誘導するリンク及びURLを得ることができました。 原告は、これは著作権法第85条 によって保護される【レコード制作者の】利用権(Leistungsschutzrechte)に反するとして、原告は被告に対して、被告によって利用設定されたインターネット接続を通じ、第三者にウェブサイト「goldesel.to」経由で問題となる楽曲をえることを可能とするリンクを差し止めること請求しました。

地方裁判所は請求を棄却しました。上級地方裁判所も原告の控訴を棄却しました。控訴裁判所によって許可された上告により、原告が上告申立てしたものです。

(3)
連邦裁判所は両方の手続の上告を棄却した。
連邦裁判所の判断の趣旨は、以下のとおりです。
—-
インターネット接続を提供する通信会社は、原則として、著作権によって保護されている作品を違法に全ての人が取得できるようにするインターネットサイトへのアクセスを妨げることを、権利者から「妨害者(Störer)」として請求されうる立場にある。求められる調査義務に反する限りで、妨害者として、(著作権や著作物の使用権のような)絶対権(absolutes Recht)が侵害された場合は-侵害者又はこれと同視しうる者でない場合で -いかなる方法でも、保護された権利物の侵害に、認識及び相当因果関係(adäquat-kausal)のある寄与をなした者は、これを差し止める義務がある。ドイツ法は,情報化社会著作権法指針(Richtlinie 2001/29/EG über das Urheberrecht in der Informationsgesellschaft)第8条3項の趣旨に従い、指針に合致するよう解釈し、そしてそれ故に、インターネットへの接続媒介者に排除命令を課すことができる余地がなければならない。
著作権法違反の内容を含むインターネットサイトへの接続を媒介する場合は、インターネットサイト「3dl.am」ないし「goldesel.to」の法律違反に対して、通信会社の相当因果関係のある寄与行為が認められる。必要となる期待可能性の衡量においては、 EU法(unionsrechtlich)及び国内の基本法の下で、著作権者の財産権の保護(Eigentumsschutz der Urheberrechtsinhaber)、通信会社の営業の自由、並びにインターネット利用者の「情報の自由」ないし「情報の自己決定権」を、考慮しなければならない。遮断は、インターネットサイトに法律違反の内容が既に掲載されている場合に、それだけで期待できるわけではなく、全体としてみて合法で、違法な内容が重要でない場合もある。インターネットの技術的な構造から生じる回避可能性の問題も、違法な内容へのアクセスを避け、あるいは少なくとも困難にする限りで、遮断命令(Sperranordnung)に問題を生じさせるわけではない。
しかしながら、インターネットへの接続を媒介する企業の妨害者責任は、比例原則の観点から、権利者が相手方-自ら違法行為を行った場合のそのインターネットサイト運営者、-あるいは、そのサービスを行うことによって、侵害行為に寄与したホストプロバイダ-に対して、まず一定の努力をしている場合のみ考慮される。このような当事者の請求が功を奏しなかった、あるいは、功を奏する見込みが全くない場合に、そしてそれ故に、他の手段では権利保護にかけてしまう結果となる場合のみ、アクセスプロバイダへの妨害者責任の請求が認められる。運営者とホストプロバイダは、法律違反そのものについては、インターネットの接続を媒介しているという意味では、本質的に似ている。先んじて請求されるべき相手方に関して、権利者は合理的な範囲内で調査をすべきである。例えば、興信所への委託、インターネット上で違法な申し出を調査する企業への委託、あるいは、国家の調査機関の介入の要請等である。

————-
結局両事件ともこの要件を欠いていると判断しました。

(4)この判決文から何を得るかということになります。

法的な理論としては、
①裁判所の判断によって、媒介者に対して排除命令を課すことは不可能ではなく、それによってEU電子商取引指令や国内法に違反することはない
②具体的な判断に際しては種々の利益が考慮されることになる。
③比例原則の観点から、権利者が、当事者に対する請求をなした場合、もしくは、それが功をそうする見込みが全くない場合に、プロバイダへの請求が認められる
ということになります。
その意味で、この事案は、請求が認められない事件になるので、この①の部分は、法律家の間では、傍論ということになります。
控えめにいって、傍論をもってみずからの論の根拠にすることは、あまり望ましいものではない、ということがいえるかとおもいます。

仮想通貨のTTX

仮想通貨の講演をお引き受けしたら、大規模な仮想通貨流出事件が発生したりと、講演のネタには、困らないわけなのですが、今年の講演は、(なんちゃってですが)TTXを採用してみようかと思っています。

TTXは、机上演習ですが、状況を簡単なシナリオ上で展開した上で、いろいろな問題について、参加者が解決策を検討し合うというものです。NATOで、法律の演習を受けたときは(参加者が全部で30名強)、6名くらいのチームを5チーム作成して、午前中は、チーム内のディスカッション、午後は、代表者の発表とメンターの講評という構成でした。

仮想通貨のTTXもどきになりますが、以下のようなシナリオと質問を考えてみました。

回答は、準備しません。私の講演で考えるヒントを与えることになるかと思います。

(ただし、東洋経済さんに「仮想通貨(2版)」だしてね、とお願いいただければ、ヒントをみなさまにお届けできるかもしれませんね)(Amazonへのリンク)

Day -3Months

次のような大学の時の友人との飲み会での相談があった

ビットコインといった仮想通貨が、世間をすごく騒がしているらしいけど、電子マネーとどう違うの?ビットコインって、世界で初めてだろう? 「貨幣の機能」をもっているのだろう?法律としては、どのような位置づけになっているの?  ビットコインの取引の広告を打っている会社があるけど、そこで、口座を開いて、取引したら、儲かるかな?

この相談であなたは、法律家としての面子を保つことができたか?

(1)仮想通貨って何?

(2)電子マネーとの違い?

(3) ビットコインが、世界で初めての仮想通貨?

(4)貨幣っていう言葉を使っていいの?

(5)ビットコインの取引の広告を打っている会社って、法的には、どのような位置づけなの?

Day-0

友人が血相を変えて、事務所に相談にやってきました。

飲み会のあと、2017年11月に友人がMt.Bitという会社に口座を開設して、ビットコインの取引をしていたそうです。最初のうちは、調子がよかったらしくて、12月に3分の1を売却して利益を確定したそうです。

そうしたら、1月26日、ビットコインが盗難にあったといって、Mt.Bit社は、一切の取引を停止しました。

(1)ビットコインの取引って法的にみたらどういう意味なのでしょうか?

(2)ビットコインの利益を確定した場合に、税金関係は、どうなるのでしょうか?

(3)「取引を停止した」というのは、どのようなことでしょうか?

Day+30

そうこうしているうちに、Mt.Bit社が破産申立をして東京地方裁判所から破産手続開始決定がなされました。Mt.Bit社は、世界的にも有数の取引所であったこともあり、たくさんの債権者もいて、しかも、世界に債権者がまたがっています。 そして、なぜかあなたは、Mt.Bit社の破産管財人に選ばれてしまいました。

 

(1)たくさんの債権者からの債権届出をどのようにして処理していけばいいのでしょうか?

(2)破産法の実定法的な処理との関係は、どうでしょうか?

(3)「大規模破産手続をIT化するのは必然である」という意見についてどのように考えますか?

Day+60

アメリカの債権者が、アメリカ国内でも、Mt.Bit社の破産手続の申立をしました。

アメリカの裁判所から、あなたに対して東京地裁の破産手続開始決定についての意見を求められました。

(1)日本におけるMt.Bit社の破産手続開始決定は、アメリカの裁判所における破産手続の申立中において、どのような効力を有するのでしょうか?

Day+90

東京地方裁判所における破産手続の途中において、ある債権者が、自分は、自分の口座にビットコインで、100BTCを保有しているはずである。なので、私の100BTCは、私のBTCなので、私に引き渡してほしいとして、BTCの価値を有することの確認訴訟を提起してきました。

(1)この確認訴訟において、あなたは、何に注目して、訴訟を遂行しますか?

(2)もし、裁判官になったとしたら、あなたは、どのような判断をするでしょうか?

Day+365

破産手続で換価をはじめとする管財業務をしていたところ、ビットコインの価格が大暴騰しました。その結果、Mt.Bit社が自己のものとして、保有していたビットコインを換価しただけでも、100%の配当ができそうになりました。

(1)口座において仮想通貨「保有」者の債権届出がなされた場合において、その債権者の債権届出に対しては、何時の時点での評価額で、何時の時点で配当がなされることになるのでしょうか?

(2)管財人としては、裁判所の許可を得て保有していたビットコインを徐々に換価していたので、残っていたビットコインの売却では、100%の換価は、実はできません。責任問題は発生するのでしょうか?

Day+400

Mt.Bit社の社長Yがその経営判断の誤りから、Mt.Bit社の情報流失を招いたことが明らかになり、その責任の査定の判断が確定しました。あなたは、社長Yに対して責任の掴取をしなければなりません。

ところが、その社長の財産は、ビットコインだけということが明らかになりました。

(1)どのようにして、社長の責任を追求し、財団を確保することができるのだろうか?

 

 

個人間ネット送金、米で急拡大 銀行や新興企業がしのぎ

個人間ネット送金、米で急拡大 銀行や新興企業がしのぎ 簡便・無料で若者から浸透 という記事がでています。

米国では、このような送金を「ピア・トゥー・ピア(P2P)送金」と呼び、ベンモなどが先行しているそうです。

紙の新聞だとこの隣に「日本、普及はこれから」という記事がつきます。割り勘アプリがあること、楽天銀行では、FBを通じて送金できること、などがふれられています。そこで、お約束の「現金信仰根強い」ので、普及は、もっと先だろうという評価が出てきます。

まずは、LINEペイにきちんと取材しましょうという話があるかと思いますが、それは、さておき、まず、P2P送金というのは、実は、新聞の見出しを賑わすほどには、あまり利用機会がないのではないか、という感じがしています。

そして、ATM送金(他の国だと、どのくらいやっているのでしょうか)が、それなりに使えるので、そんなに不便に思われないというのが、実際なのではないでしょうか。岡田先生のコンジョイントでP2Pの送金機能は、あまり重要度が高くなかったとでたような記憶があります。(新規技術が認容されるための仮説というのは、岡田先生のお得意ね-TAMとかは嫌いだけど、使えるよねと)

小切手で送っていたら、アプリは欲しいでしょうけど、ATMで送れていたらね、そんなに必要だとおもわないんだよね、というところではないでしょうか。ただ、個人的には、チャットでの送金サービスというのは、おもしろいと思っているので、まさに、LINEペイが、どうなの?というのは、興味があります。