インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(第4回資料)を読む

著作権とブロッキングについての株式会社ITリサーチ・アートの報告書をご紹介しました

基本的には、属人的な問題よりも、国際的な基礎的な情報の収集が基礎調査になるし、それが、日本には欠けているよねという感じを思っているので、そのような観点から、TF4回目の資料をみてみたいとと思います。

インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(第4回資料)は、こちらです。

比較法的な分析となると

(1)イギリスについての「イギリスの制度について」(明治大学情報コミュニケーション学部准教授 今村哲也氏)は、資料がでていないのが残念です。

ITリサーチ・アートの報告書(イギリスは、高橋が担当しました)ですと、137頁以降になります。根拠としては、著作権指令に基づくCDPA97条A に基づいて、事件としては、Newsbin1、同2、同3の事件があって、確定した判例法理として差止が認められています。あと、エントリで紹介したカルティエ事件でカバーできるかと思いますがか、どうでしょうか。

(2)ドイツについては、上野先生の資料(ドイツ著作権法におけるブロッキング)においては、ドイツ連邦通常裁判所(BGH)判決(2015 年 11 月 26 日))と、ミュンヘン地裁決定(2018 年 2 月 1 日)が紹介されています。

ドイツ連邦通常裁判所(BGH)判決(2015 年 11 月 26 日)については、笠原先生担当で、ITリサーチ・アート報告書 209頁に事案報告がなされています。

調査義務については「著作権法違反の内容を含むインターネットサイトへの接続を媒介する場合は、インターネットサイト「3dl.am」ないし「goldesel.to」の法律違反に対して、通信会社の相当因果関係のある寄与行為が認められる。必要となる期待可能性の衡量においては、EU 法(unionsrechtlich)及び国内の基本法の下で、著作権者の財産権の保護(Eigentumsschutz der Urheberrechtsinhaber)、通信会社の営業の自由、並びにインターネット利用者の「情報の自由」ないし「情報の自己決定権」を、考慮しなければならない。遮断は、インターネットサイトに法律違反の内容が既に掲載されている場合に、それだけで期待できるわけではなく、全体としてみて合法で、違法な内容が重要でない場合もある。インターネットの技術的な構造から生じる回避可能性の問題も、違法な内容へのアクセスを避け、あるいは少なくとも困難にする限りで、遮断命令(Sperranordnung)に問題を生じさせるわけではない。

しかしながら、インターネットへの接続を媒介する企業の妨害者責任は、比例原則の観点から、権利者が相手方-自ら違法行為を行った場合のそのインターネットサイト運営者、あるいは、そのサービスを行うことによって、侵害行為に寄与したホストプロバイダ-に対して、まず一定の努力をしている場合のみ考慮される。このような当事者の請求が功を奏しなかった、あるいは、功を奏する見込みが全くない場合に、そしてそれ故に、他の手段では権利保護に欠けてしまう結果となる場合のみ、アクセス・プロバイダへの妨害者責任の請求が認められる。運営者とホストプロバイダは、法律違反そのものについては、インターネットの接続を媒介しているという意味では、本質的に似ている。先んじて請求されるべき相手方に関して、権利者は合理的な範囲内で調査をすべきである。例えば、興信所への委託、インターネット上で違法な申し出を調査する企業への委託、あるいは、国家の調査機関の介入の要請等である。結局両事件ともこの要件を欠いていると判断した。」と報告されているところです。

私としては、このテーマに対して、株式会社ITリサーチ・アートが、このように詳細な報告を、提供できたということは、本当に誇りに思います。

それ以外の解釈論について
(3)宍戸 常寿先生の「ブロッキングの法制度整備に関する憲法上の論点の検討」があります。

これについては、憲法が、プロバイダの行為に直接適用されるという前提に立っているように見えて、?と思っています。

政府レベルで、この論点について、述べているものは、「情報通信の不適正利用と苦情対応の在り方に関する研究会報告書」の報告書であると思われます(1999年)。

この報告書においては、「一般的には、発信者の氏名、住所等の発信者情報についても『通信の秘密』に含まれるとされているため、この問題を検討する上では、まず、『通信の秘密』を保護した現行の法規定との関係を整理する必要がある。」とした上で、憲法上の「通信の秘密」との関係について、「基本的には、憲法の基本的人権の規定は、公権力との関係で国民の権利・自由を保護するものであると考えられている。電気通信自由化以前については、電電公社、国際電信電話株式会社には憲法の規定が適用されていたとも考えられるが、電気通信が自由化された現在では、電気通信分野における競争の進展状況、インターネットの登場等の電気通信の多様化の進展状況にかんがみれば、憲法上の『通信の秘密』は私人である電気通信事業者等へは直接的な適用はなく、電気通信事業法等で保護されているものと考えられる。」とされています(同報告書・第4章・2(1))。

学説的には、昔の本しかないのでごめんなさいですが、

阪本昌成「憲法理論Ⅲ」143頁は、旧公衆電気通信法の規定の位置づけについての議論(KDDを国家と同視して、公衆法上の規定は憲法の要請である)をあげて、通説的な立場は、「現在でも、電気通信事業法上の規定につき、同様に解されているようである」とし、それに対して、「国家の監督に服する私人の行為であればステイト・アクションとなるわけではなく(略)、KDDの示す『独占・公益性』は私企業としての特徴を指すだけであり、市民が利用を強制されていると、比喩以上のものではないからである(利用者は、他の手段によって自由に通信しうるのであって、電話利用を強制されてはいない)」としています。(いわんとすることは難解ですが、キャリアについて、一定の法定を求めていることを憲法が求めることを抽象的に、意味していて、具体的な法定内容までは、憲法の定めるところではないというように読めます-この部分追加@26July,2018)

松井茂記「インターネットの憲法学」295頁は、「通信事業の持つ公共的性格を考慮すると、これに憲法の通信の秘密保護規定を直接適用する考え方には、一理あるが、現在のように電気通信分野が民営化された状況では、やはり電気通信事業者を政府の一部と考えることは困難であり、憲法の通信の秘密規定はそのままでは適用されないと考えるべきであろう。それゆえ電気通信事業者であるプロバイダーが送信者情報を開示することは憲法違反とはいえない」としていました(岩波書店、2002)。

なので、宍戸先生の資料が直接適用説を当然の前提にしているように読めてしまって、どうも大きな?がついて回るのです。

あと、海外からの通信についても、「憲法の規定がそのまま適用されるのか」というのは、問題提起をしたいと思います。

むしろ、先例としては、平成28年12月9日 最高裁判決(覚せい剤取締法違反、関税法違反被告事件)が出されるべきなのではないでしょうか。
この判決は、税関検査に関するものですが、
「行政上の目的を達成するための手続で,刑事責任の追及を直接の目的とする手続ではなく,そのための資料の取得収集に直接結び付く作用を一般的に有するものでもない。
また,国際郵便物に対する税関検査は国際社会で広く行われており,国内郵便物の場合とは異なり,発送人及び名宛人の有する国際郵便物の内容物に対するプライバシー等への期待がもともと低い上郵便物の提示を直接義務付けられているのは,検査を行う時点で郵便物を占有している郵便事業株式会社であって,発送人又は名宛人の占有状態を直接的物理的に排除するものではないから,その権利が制約される程度は相対的に低い」としているものです。

この点は、月曜日の無法協で、議論を提起したところですので、週末に原稿おこししますが、少なくても、国外からの通信がわが国に伝わる時点においては、国家主権が優先すると考えているので、むしろ、他の基本権と衝突する際には、国家は、国外からの通信の自由を保障しない(尊重する義務がある、ITU憲章 34条参照)ことも許容されると解しています。(国境における国家の通信における主権は、それを国内の行使に委託することができると考えています)

なお、同条は
第三十四条 電気通信の停止

1 構成国は、国内法令に従って、国の安全を害すると認められる私報又はその法令、公の秩序若しくは善良の風俗に反すると認められる私報の伝送を停止する権利を留保する。この場合には、私報の全部又は一部の停止を直ちに
発信局に通知する。ただし、その通知が国の安全を害すると認められる場合は、この限りでない。
2 構成国は、また、国内法令に従って、他の私用の電気通信であって国の安全を害すると認められるもの又はその法令、公の秩序若しくは善良の風俗に反すると認められるものを切断する権利を留保する。

としています。

 ちなみに、私は、国際法とは二元論なので、憲法上位だとかいう批判は受け付けません。できるだけ、国際法と国内法は、調和した解釈をとるべきでしょう、ということと、国際通信には、憲法の規定が及ばないし、電気通信事業法も海外の事業者にはおよばないのに、なんで、(国内の場所だからという理由で)国際通信が100%保障されるような解釈がとれるの?というものです。

(4)山本先生の資料は「ブロッキングの法制度整備に関する民事手続法上の論点」です。

この提起している問題点は、大きいと思いますし、また、EUや英国の判例理論は、非常に重要な示唆をあたえてくれると思うので、次のエントリで考えます。

報告書以降の英国の判決例(カルティエ事件)

前のエントリで、ふれた総務省報告書になりますが、一番の問題点は、2016年2月時点の法的状況をまとめたものということになります。

できますれば、著作権団体なり、プロバイダなり、タクスフォース関係者なりから、調査資金をいただければ、各法域について、アップデートできるかと思います。
なので、利害関係者の方は、ぜひとも、アップデートについて、資金をご準備の上、追加調査をオーダいただけるとと思います。よろしくお願いします。ご連絡は、株式会社ITリサーチ・アートまで。

非常に重要な問題であるにも関わらず、インテリジェンスについては、ボランティア頼りというきわめて日本的な状況は打破したいという気持ちはあります。

それは、さておき、差止の場合の費用の負担を、権利者側とするのか、プロバイダ側とするのか、というきわめて実際的な問題が議論されているのも、このような比較法的な検討によって得られる成果ということがいえるかと思います。
この事件は、Cartier International AG and others (Respondents)v British Telecommunications Plc and another (Appellants) になります。判決(201年6月13日 )のリンクは、こちらです

日本語でも紹介がなされています。専門的な紹介はこちら。(東海大学 ファッションローコラム)

タスクフォース1回目でも議論が紹介されています (19頁 丸橋さん)

要点としては、裁判所は、Norwich Pharmacal事案において、申立人が費用を負担していること、不正行為を追跡するために銀行が、情報開示のための命令を受ける場合に銀行が費用を負担していることなどから、差止命令は、エクイティから生じるものであることを理由として、権利者側が負担することを認めました。

もっとも、EU法において、プロバイダの特権が認められる代わりにコストは負担すべきとの考えもありうるが、コスト負担の問題は英国法の問題であるともしています。

 

著作権に基づくブロッキングに関する総務省報告書(株式会社ITリサーチ・アート委託調査)

総務省から「諸外国におけるインターネット上の権利侵害情報対策に関する調査研究の請負」報告書が公開されました。

報告書本体は、こちらです。株式会社IT リサーチ・アートのご挨拶は、こちらです

報告書自体は、

第1章 いわゆる「忘れられる権利」についての報告部分と

第2章 主要な国および地域におけるISPによる権利侵害情報対策の状況

にわけられます。

第1章部分もきわめて重要な報告書ではありますが報告書完成以降、最高裁判決等、状況がかなり変わってきているということがいえるかと思います。

第2章は、名誉毀損情報/プライバシー侵害情報に対する対応についての分析をも含みますが、著作権侵害情報に対する対応についても、詳細な検討がなされています。

海賊版問題に対するタスクフォースでも、EU、英国、フランス、ドイツ、イタリアの判決例について詳細な紹介は、現時点においては、いまだなされていないので、有意義な情報になるかと考えます。

私(高橋)としても、会社の作品が、わが国の立法の議論にお役にたてるとこれほどうれしいことはないです。

 

 

「海賊版対策タスクフォース、ブロッキングで議論紛糾」の記事よりも実際的なもの

「海賊版対策タスクフォース、ブロッキングで議論紛糾」という記事がでています。7月18日の政府の知的財産戦略本部は2018年7月18日、「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」の第3回会合に関する記事になります。

個人的には、そろそろ、立法論的な解決にむけて、個々の法域の実務がどのようになっているかの詳細な調査をもとに、むしろ、立法論を論じるべき時期にきているかと思います。

そのような観点からみるときに、個人的に、誰と、誰の意見が、どうした、というよりも、この会議の資料に興味深いものが見つかるかと思います。

今回の資料は、こちらですね。

「知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会 インターネット上の海賊版対策に関する検討会議 (タスクフォース)(第3回)」

記事で紹介れているアンケートも興味深いですね。資料4ですね。
法的な立場からは、
資料7 : 奥邨氏提出資料(オーストラリア)
資料8 : 張氏提出資料(韓国)
がそれぞれ興味深いものです。

(1)オーストラリア

オーストラリアについては、2015年の115A条において海外のプロバイダに侵害コンテンツがホストされている場合に、裁判所の命令によって規制を及ぼすものが紹介されています。なお、詳細については、「サイトブロッキングと著作権法 ~オーストラリアの制度を参照しつつ~」という論考が公表される予定とのことです。

海外からの通信であることから、憲法論、事業法の議論とかは、わが国においても関係がなくなるのではないかということが示唆されているのかもしれません。

(2)韓国

韓国については、この資料の5に記載されています。

著作権を侵害する情報は、情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律第44条の7第1項9号の「その他犯罪を目的とするか、教唆又は幇助する内容の情報」に当たると解されている

放送通信委員会は、当該サイトに掲示されている情報が同号に当たるかどうかを審議することができる。

文化体育観光部長官からの要請があった場合には、当該情報の情報通信サービス提供者又は掲示板の管理・運営者に対し当該除法の取扱いを拒否・停止又は制限するように命じなければならない(同条3項1号)。

そして、放送通信委員会の設置及び運営に関する法律第25条1項2号に基づき、放送通信審議委員会は、情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律第44条の7に従い、不法情報流通に対する取扱いの拒否・停止又は制限(ブロッキング)といった制裁措置を定めることができるとされている。

ということになります。

また、ドイツなどでは、著作権者の調査・対応義務が尽くされることがブロッキングの要件であったり、イギリスでは、費用が、権利者負担という判断が示されたりと、非常に、具体的な比較法の調査の重要性が示されているように思われます。

 

 

EUと日本、個人データの相互移転で最終合意

「EUと日本、個人データの相互移転で最終合意」という記事がでています。

下の重要な要素のところの「日本の公的機関によるデータへのアクセスに関するヨーロッパ人の苦情を調査し​​解決する苦情処理メカニズム。」って、総務省の権限ではないでしょうか。

EUのプレスリリースは、こちらになります。機械もつかって訳してみました。


EUと日本は今日、互恵的十分性に関する会談を成功裏のうちによく締結した。両者は、相互のデータ保護システムを「同等のものequivalent)」として認識し、EUと日本の間でデータが安全に流れるようにすることに合意した。

両国は、十分性認定を採択するために関連する内部手続きを開始する予定である。 EUにとっては、これは、欧州データ保護委員会(EDPB)からの意見と、EU加盟国の代表から構成される委員会からのグリーンシグナルを得ることを含む。この手続きが完了すると、委員会は日本に対する十分性の決定を採択する。

VeraJourová(司法、消費者、両性平等コミッショナー)は、「日本とEUは既に戦略的パートナーである。データは世界経済の原動力であり、この合意は、市民と経済の両方の利益のためにデータが、安全に行き来することを可能にするだろう。それと同時に私たちは、個人情報の保護に関する共通の価値観へのコミットメントを再確認しており、協力してデータ保護のためのグローバルスタンダードを形成し、この重要な分野で共通のリーダーシップを示すことができると確信しています。」と語っている。

この相互の十分性についての取り決めにより、個人データの保護レベルが高いことに基づいた世界最大の安全なデータ移転地域が生まれます。ヨーロッパ人は、データが日本に移転される際、EUのプライバシー基準に沿った個人データの強力な保護の恩恵を受けるでしょう。この取り決めはまた、EUと日本の経済連携協定を補完するものであり、欧州の企業は、この主要な商業パートナーとのデータの移転に制限がなされないこと、ならびに1億2,700万人の日本の消費者への特権的アクセスから恩恵を受けるでしょう。この合意により、EUと日本は、デジタル時代には、高いプライバシー基準の推進と国際貿易の促進が両立することを確認しています。 GDPRの下で、十分性の決定は、安全で安定したデータフローを確保するための最も直接的な方法です。

十分性判断の重要な要素

本日の合意は、EUと日本の同等レベルのデータ保護の相互承認を想定しています。一度採用されると、商業目的で交換された個人データがすべての移転において、高いレベルのデータ保護が適用されることを保証します。

日本は、EUの基準に準拠するために、委員会が正式に妥当性の決定を下す前に、EU市民の個人情報を保護するために、以下の追加のセーフガードを実施することを約束している。

  • 個人情報を日本に移転するEU内の個人に対して提供される、2つのデータ保護システム間のいくつかの相違点を橋渡しする追加の保護手段を提供する一連のルール。これらの追加的な保障措置は、たとえば、機微データの保護、EUのデータを日本から他の第三国にさらに移転するための条件、アクセスおよび是正のための個人的権利の行使などを強化するもの、です。これらのルールは、EUのデータを輸入する日本の企業にたいして、拘束力を持ち日本の独立したデータ保護当局(PPC)と裁判所によって執行されます。
  • 日本の公的機関によるデータへのアクセスに関するヨーロッパ人の苦情を調査し​​解決する苦情処理メカニズム。この新しい仕組みは、日本の独立したデータ保護機関によって管理され監督されます。

次のステップ

委員会は、今年秋に通常の手順に従い、十分性の決定を採択する予定である:

  • 大学による十分性判断の草案の承認
  • 欧州データ保護委員会(EDPB)からの意見書、その後のコミトロジー手続き
  • 市民の自由、正義と内政に関する欧州議会委員会の更新
  • 大学における十分性判断の採用

並行して、日本は自国の妥当性の確認を確定する。

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日本の個人情報保護委員会の「日EU間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠組み構築に係る最終合意」についての資料は、こちらです。

「個人情報保護法第 24 条に基づくEUの指定について」という添付資料においては「当委員会事務局から、個人情報保護法第 24 条に基づくEUの指定に向けて、個人情報保護委員会規則第 11 条第1項各号に規定する外国指定に係る判断基準に基づくEUの確認の状況についての報告があった」とされています。

「熊澤春陽個人情報保護委員会委員、ベラ・ヨウロバー欧州委員会委員(司法・消費者・男女平等担当)による共同プレス・ステートメント東京、2018 年 7 月 17 日」では、「十分性の対話は、日本の個人情報保護法に基づく措置及び独立した個人データ保護機関である個人情報保護委員会の役割、並びに、EU の一般データ保護規則に基づく措置及びその統治機構への相互理解を確認した。
両者は、2018 年の秋までに日 EU 間の相互の円滑な個人データ移転の枠組みが運用可能となるために必要とされる関連国内手続を完了させることにコミットする。 」とされています。

EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用

「EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用」という報道がなされています

正式なプレスリリースは、こちらのページです。

このブログ(駒澤綜合法律事務所)においても、「アップル信者の存在の科学的証明?-Googleアンドロイド事件」というタイトルのもと、事実認定について、まとめています。

Googleの関係する事件としては、比較ショッピングサイトに関する事件(グーグル・ショッピング事件と呼ばれているようです。エントリとしてはこちら(「欧州委が示す巨大ネット企業の責任」)、プレスリリースはこちら)と、このアンドロイド事件(40099)、AdSenseの事例(これはまだ分析していません)があります。

今回のアンドロイド事件のプレスリリースですが、まずは、「スマート携帯OS」の競争について考察しています。

アップルとスマート携帯電話についての市場は、競争になっているようだけども、現実のところ、「グーグルのデバイス製造会社(上流)に対する行動の制約としては、十分になっていない」と認定しています。

要は、アップルは、信者がいるので、市場としては別であると認定しているんじゃないの、ということです。(これは、昨年のブログでふれたところ)。

グーグルは、アンドロイドというOSの市場において、ドミナントであると認定されています。確かに、中華スマホじゃないと、グーグル・プレイストアがないスマホにはあえないのは事実ですね(90パーセント以上と認定されています)。

それでもって、EUの競争法違反の事実としては、以下の事実が認定されています。

(1)グーグルの検索とブラウザアプリの違法な抱き合わせ(Illegal tying of Google’s search and browser apps)
これは、プレイストアのプリインストールが製造業者にとって必須とされていることを意味します。

委員会の認定としては「検索アプリの抱き合わせ」「クロームブラウザの抱き合わせ」をしており、「製造業者に対して、競争する検索・ブラウザアプリをプリインストールするインセンティブを減少させた」としています。これに対する、これらのプリインストールが必要だったというグーグルの主張は採用されませんでした。そこでは、「グーグルは、数ビリオンドルをプレイストアから、稼ぎだしており、アンドロイド機器から、検索広告ビジネスに必要なデータを集めている。制限なしに、検索広告から重要な利益を稼ぎだしうるのである」から根拠がないとしています。

去年の事実認定は、一般ユーザとの間での「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」といっていました。製造業者の自由なアンドロイドの製造の自由をみとめないことが、消費者の便益を妨げるというようにと重点が変わっているようです。

(2) グーグル検索の排他的プレインストールに対する違法な支払い(Illegal payments conditional on exclusive pre-installation of Google Search)

これは、グーグルが、グーグル検索を排他的にインストールすることに対してインセンティブを支払っていることが、違法であるとしています。
競争的検索エンジンを採用することに対してインセンティブを減少させ、競争を傷つけるというものです。

インテル決定でもふれたように、委員会は、諸般の事情を考慮して、インセンティブが認められる条件、額、マーケットシェア、期間から判断したとしています。そして、違反行為は、2011年から、2014年までの間であり、2014年には、終了したと判断されています

(3)競争するアンドロイドの発展・配布に対する違法の妨害(Illegal obstruction of development and distribution of competing Android operating systems)

これは、製造業者に対して、グーグルの認めないアンドロイドバージョン(アンドロイド・フォーク-Android forks)を利用することを妨害したというものです。プレイストアと検索エンジンをプレインストールするためには、アンドロイドフォークを製造しないことを約束させられたのが、これに該当します。委員会は、アマゾンが、Fire OSを発売し、発展させるのを妨げていると認識しています。

「断片化」防止のためには、必要だったという主張に対しては、技術要件を満たすことでもって、アンドロイドフォークを妨害しなくても、望む目的は果たせたはずであるとか、アンドロイドフォークが、技術的失敗によるとかの証拠はないとしています。

モバイルOS市場と、検索・ブラウザが別市場で、OSの市場力でもって、検索・ブラウザ市場を制覇したというのでしょうか。IE4.0にケンカうって、欧州では、消費者にとって、何かいいことがあったのでしょうか。
日本の感覚だと、iOSとアンドロイドは、競争状態にあり、検索・ブラウザの体験も踏まえて、どちらにするかを選んでいるように思えます。欧州でのモバイル市場は、消費者の認知からすると別なのかと思いますが、IT業界に対する競争法の適用が、その介入のためのコストがかかることも含めて、効果は、微妙だなあと感じるところですね。
(いまさら、野良アンドロイドの製品は、買いたくないというのが消費者の感覚でしょうし)

電波法無罪判決の有罪部分分析

前のエントリで紹介した「電波法無罪判決」(平成29年 4月27日 東京地裁判決)ですが、無線法律家協会でのプレゼンのために、ちょっと事案を読んでみると、なかなかすごいところがあったので、ご紹介です。

有罪部分は、フィッシング、SQLインジェクション、RAT/遠隔操作、無線局設置の4つのパターンにわけられます。

1 フィッシングケース
フィッシングの事案は、以下のような感じです。

(1)被告人が、A銀行のAダイレクトになりしまして、フィッシングサイトを公開して、フィッシングメールを送信して、誤信させて、被害者Bのお客様番号、ログインパスワード、インターネット用暗証番号等を(被告人の管理するサーバ内に記録させて)取得した。
(2)この取得した識別符号を入力し、A銀行(Aダイレクト)に不正アクセスをなした。
(3)(2)の状態を利用して、Bのメールアドレスが変更になったという虚偽の情報を送信した。
(4)(2)の状態を利用して、被告人が第三者をして管理させていたD名義の口座に振込送金があったという虚偽の情報をあたえて87万円の不法の利益を受けた。

これを被害者E(公訴事実第4及び第5)、被害者有限会社H(公訴事実6及び7)、被害者株式会社O(公訴事実13)に対しても行っています。

2 SQLインジェクションケース
SQLインジェクションは、こんな感じです。

脆弱性検査ツールを利用して、被害者株式会社J(公訴事実8、不正アクセスのみ)の管理するサーバコンピュータにSQLインジェクションを行った。

3 RAT/遠隔操作ケース
RAT(リモートアクセスツール)の実行した事案は、こんな感じ。

(1)被害者株式会社L(公訴事実9および11)の代表者が、コンピュータウイルスscreenshot2.exeを実行した。
(2)被告人が、被害有限会社Nに対して「自動的に電気通信回線を介して被告人使用のパーソナルコンピュータとの通信を開始させるとともにIPアドレス情報等を同パーソナルコンピュータに通知する機能及び同パーソナルコンピュータでの操作によって起動場所であるパーソナルコンピュータ内の電磁的情報を検索して被告人使用のパーソナルコンピュータに送信させる機能等を有するプログラム」を添付したメールを送信した。(公訴事実12)

4 無線局設置
総務大臣の免許を受けず、無線設備を設置して、無線局として運用可能な状態に置いた。
これは、争点からみると、インターネットオークションで購入した無線LANアダプタを利用したものである。のウェブページの「商品説明欄」直下には,「実験用・研究用・海外向け製品です 国内の使用は電波法違反になります」との記載があり,さらにその下方の「注意事項」欄には,「日本(11n 150Mbps)出力制限値5mWをはるかに超えております 国内でのご使用はお控えください 海外でのご利用は使用する国の電波法を必ずご確認お願い致します」との記載があった場合に、アクセス用のアダプタを利用したという場合です。

というわけで、サイバー犯罪の典型例が、並んでいるということで、標準的な公訴事実の記載の仕方とかが、みることができるので、いい例(?)かと思います。

「無線LANただ乗り、電波法は「無罪」…懸念も」の判決文

平成29年4月27日の電波法違反の一部無罪の判決が裁判所の判例紹介にのっていたのを見つけたので、リンクを張っておきます

無罪の理由は、WEP鍵が、無線通信の存在及び内 容ではない、というものでした。ということで、私のブログの指摘は、間違っていませんでしたね。一安心。

ただ、ブログで指摘した、ルータの無権限利用という観点は、判決をみる限り、ヒントとなるような事実関係はないみたいですね。

 

 

ウェブサイトにおけるクッキー使用に関する質問に対する答弁書

ウェブサイトにおけるクッキー使用に関する質問に対する答弁書が、でています。って

全文で
「お尋ねについては、政府のウェブサイトにおけるいわゆるクッキーの取扱いの状況に係る調査に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難である。」
ということだそうです。

アカデミズム的におもしろそうと思っていたのですが、回答が出てこなくて、残念。

欧州議会、著作権新指令案否決 条項見直し9月に再投票へ

欧州議会、著作権新指令案否決 条項見直し9月に再投票へhttp://www.itmedia.co.jp/news/articles/1807/05/news140.html
となったそうです。

この指令案の正式名称は、「デジタル単一市場の著作権に関する欧州議会および委員会指令提案」( Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on copyright in the Digital Single Market)です。

同指令は、6月20日に欧州議会・法務委員会において可決されていたものです。

この著作権指令改正案は、「デジタル技術の進展が著作物やその他の作品の創作方法、生産方法、配信方法、悪用方法を変えている、新しい使用は、新しいプレーヤー、新しいビジネスモデルともに、出現している。デジタル環境において、国境を越えて利用されており、消費者にとって、著作権保護されたコンテンツにアクセスする機会が重要になっている。著作権枠組によって設定された目標と原則は、健全なものであるが、新しい現実に適応する必要が存在するのである」ということから、改正案が提案されていたものです。

特に、ISPとの関係で、問題となるのは、13条にとなります。

同指令13条は、ネットワークにおける通信に対する関与を是としない立場からは、検閲マシーン条項と揶揄されています。
13条の条文は、

ユーザによるアップロードされる大量の作品等を保存し、アクセスをなす情報社会サービスプロバイダーによる保護されたコンテンツの利用(Use of protected content by information society service providers storing and giving access to large amounts of works and other subject-matter uploaded by their users)

1. 大量の作品や利用者がアップロードしたその他の主題を一般市民に保存して提供する情報社会サービス提供者は、権利者と協力して、権利者と作品の使用について締結した契約の機能を確保するための措置を講じる/またはサービス提供者と協力して権利所有者によって特定された作品またはその他の対象物に関するサービスの利用可能性を防止する(shall)。 効果的なコンテンツ認識技術の使用などの措置は、適切かつ比例していなければならない。サービス提供者は、関連する場合には、措置の機能および実施について作品およびその他の対象物の承認および使用に関する適切な報告について適切な情報を権利者に提供しなければならない。

2. 加盟国は、パラグラフ1で言及された措置の適用に関する紛争の場合、利用者が利用できる苦情および救済メカニズムを、第1項に記載のサービス提供者が適所に置くことを確実にしなければならない。

3. 加盟国は、適切な場合には、情報社会サービス提供者と利害関係者の対話を通じて、とりわけサービスの性質、技術の進歩に照らしたその有効性と効果を考慮にいれて、適切かつ比例するコンテンツ認識技術などのベストプラクティスを定義するために協力を促進する。

です。

この趣旨については、同指令改正案の前文(37)ないし(39)に詳述されています。
具体的には、

(37)過去数年間、オンラインコンテンツ市場の機能は複雑さを増している。権利保有者の関与なしにユーザーによってアップロードされた著作権保護されたコンテンツへのアクセスを提供するオンラインサービスは、盛んになり、オンラインコンテンツへの主なアクセス元になっています。これは、権利の保有者が、自分の著作物や他の対象物が使用されているかどうか、またどのような条件の下で、適切な報酬を得る可能性を判断する可能性に影響する。

(38)情報社会サービス提供者が、ユーザがアップロードした著作権保護された作品またはその他の対象物に公共のアクセスを提供する場合、物理的設備の単なる提供や一般に伝達する行為を行うことを超えており、欧州議会および理事会の指令2000/31 / ECの第14条に規定されている責任免除の対象とならない限り、権利者とのライセンス契約を締結する義務がある。
第14条に関しては、アップロードされた作品や対象物の提示を最適化すること、またはそれらを促進することを含む、サービスプロバイダが積極的な役割を果たすかどうかを、その手段の性質にかかわらず検証することが必要である。
許諾契約の機能を確実にするために、大量の著作権保護された作品またはユーザーがアップロードしたその他の主題に公衆へのアクセスを保管し提供する情報社会サービスプロバイダは、著作物の保護を確実にするために、効果的な技術の実施など、その他の主題を含む。この義務は、情報社会サービス提供者が指令2000/31 / ECの第14条に規定されている免責免除の対象となる場合にも適用されるべきである。

(39)ユーザと権利者によってアップロードされた大量の著作権保護された作品やその他の対象物に対して、一般にアクセスしてアクセスを提供し、提供する情報社会サービスプロバイダと、権利者が、協力することは、コンテンツ認識技術などの技術が、機能を果たすことにとって不可欠である。そのような場合、権利者は、サービスがコンテンツを識別できるようにするために必要なデータを提供し、権利者が、適切な評価をすることを可能にするために実際に利用されたテクノロジに関する透明性を有する必要がある。このサービスは、特に権利者に、使用される技術の種類、操作方法、および権利者のコンテンツ認識成功率に関する情報を提供する必要がある。これらの技術は、権利者が情報社会サービスプロバイダから、コンテンツの使用についての情報を入手することも契約によって認められるべきである。

ということです。

なお、この前文のなかの著作権指令14条というのは、ホスティングプロバイダの規定です。

第14条 ホスティング
1. サービスの受取人により提供される情報の保存からなる情報社会サービスが提供される場合には、加盟国は、次の各号に掲げる条件を満たす限り、サービスプロバイダーが、サービスの受取人の求めにより保存した情報に対しては責任を有しないことを、保証しなければならない。
(a)そのプロバイダーが、損害賠償の請求に関する違法な行為又は情報を実際に知らないこと、そして、違法な行為又は情報が明白である事実又は状況に気付いていないこと、又は
(b) プロバイダーが、そのようなことを知り、かつ、気付いたときに、その情報を除去するか又はそれへのアクセスを不可能にするために、迅速に行動すること。
(略)